燐光群「屋根裏」

2002年5月に初演、8月に追加公演するなどこれまで何度か上演された燐光群の「屋根裏」がいま全国ツアーの最中です。1月末から2月半ばまで米国ツアー、2月末から伊丹、北九州、金沢、熊本、岡山と回り、3月末から4月16日まで東京の梅ヶ丘BOXで公演。その後、松本、相模原まで続く予定です。

北九州で上演された舞台を「福岡演劇の今」サイトを主宰している薙野信喜さんが「見せつけられる、大きな構成」という題で次のように書いています。

奥の深い題材をみごとに表現する、大きすぎるほどの構成と圧倒的な切れ味―予想を裏切り続ける展開にもうワクワクした。
ズシリと重い内容とそのための強烈な仕掛けがあるのに、その表現は簡潔で軽やかにさえ見え、含蓄と余韻たっぷりだ。

この作品は2002年度の読売文学賞戯曲部門賞受賞作となり、紀伊國屋演劇賞、読売演劇大賞[最優秀演出家賞]受賞も併せて受賞しました。燐光群の代表作と言っていいでしょう。

初演時のパンフに掲載されたあいさつで、主宰者の坂手洋二は次のように記しています。

そう、私は生かされている。いつも、私以外の誰かの存在の御陰によってだ。(中略)
これほど劇団員の一人一人をすべて生かそうと思って書いた戯曲は過去にそれほどない。これでがんばれなかったら、みんな俳優や劇団員などやめたほうがいい。私も座付作者を気取ることなどやめてしまおう。
必要なことは、演劇の楽しさである。それが人生の楽しさになるべく、努力したい。こんな脳天気な言い方にこそに厳しさがあるのだとは、このアトリエに辿り着く前の私は、まだ認識し得ていなかったかも知れない。

生かし生かされる、極当たり前の日常生活が濃密に書き込まれ、この作品のモチーフがさりげなく感じられる一文だと思われます。
ぼくも02年8月公演と今回の東京公演をみましたが、基本的な考え方は変わりません。以前のレビューは「虚実すれすれ、緩急自在な世界」をご覧ください。

投稿者: 北嶋孝

ワンダーランド代表

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