楽園王「ELECTRIC GARDEN」公演が東京・荒川区の町屋ムーブで開かれました(4月13日-15日)。「デジログからあなろぐ」サイトの「吉俊」さんはここまでカバーしているか、というほどまめに都内の小劇場に足を運んでいて、この公演のレビューもしっかり書いています。
その後、役者の演技、場面転換など「スタッフワークでのセンスのよさ」を指摘しています。ただ「芝居の雰囲気と語られる脚本の親和性」などバランスに欠けるとの苦言も。
これは神楽坂と麻布に劇場拠点を持つ die pratze 主催の「M.S.A.Collection2005」シリーズの一つ。中野成樹(POOL-5)+フランケンズ「ラブコメ」に次いで2回目の観劇でした。
舞台はある若い会社員が、不良とみられる男を次々に殺害したという設定で始まります。殺害事実は認めているのに、動機が不明。取り調べと同時進行で、会社員の家庭や幼少期の出来事が、過去のフラッシュバックと語りかける死者たちとの遣り取りなどから浮かんできます。
ステージらしい舞台は見あたりません。フロアーにパイプで組み上げた客席が三方にあり、劇が始まると間もなく、いわゆる正面にあったキャスター付きの大型組み立てパイプが移動して、死者らの居場所になったりします。フロアー付近から青白い照明がサーチライトのように闇に走り、ノイズ風のテクノ音楽があるときは低くある時は強く轟音のように響いてきます。
娘(生者と死者に二重化されている)の引きずるような足取りと音節をずらした発語が平仄を合わせ、確かに言葉が生起するどろどろした部分のイメージは伝わってきます。低くかすかに響く鈴の音が、幽明の境を行き来する合図のようにも聞こえました。
楽園王のWebサイトによると、この作品は「は1992年春、当時田端にあった田端ディプラッツにて初演。楽園王旗揚げ1年目のことである。現実と非現実の境界線を曖昧にし、迷宮的な物語と、それが翻って現実を浮き彫りにする長堀戯曲の特徴を強く持った作品の一つ。ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』を護身用に常時携帯していた時期の執筆から影響が強く、また現実に起こったある凄惨な事件を扱ったことから何より恐怖感を感じる作品となった」とあります。
初演から13年たっての再演。作品の構成は余り変わっていない印象を受けます。調べ室と死者との会話、過去のフラッシュバックなどが入り組んで時には理解不能状態になりました。ツァラトゥストラという言葉が表現されるコンテキストも「お母さんのために薬になる言葉を探す」というフレーズも客席に飛び込まず、宙をさまよっているように感じられました。
主宰・演出の長堀博士は、利賀演出家コンクール2004で、イヨネスコ作「授業」で優秀演出家賞を受賞しています。別の作品で力量のほどを味わいたいと思いました。
[上演記録]
◎楽園王「ELECTRIC GARDEN」
町屋ムーブ(4月13日-15日)
作・演出 長堀博士
出演 松の秀明、大畑麻衣子、塩山真知子、杉村誠子、小林奈保子、二階堂洋右、田中新一、植村せい、岩崎雄大、嶋守勇人、辻崎智哉、小田さやか、吉田郷子、丹生谷真由子(OM-2) ほか
スタッフ 照明:南出良治、音響:齋藤瑠美子、選曲/美術:長堀博士、舞台監督:田中新一、宣伝美術:小田善久、制作:楽園王オフィス
劇評ありがとうございます。
吉田郷子です。
今回の作品、いろいろと難関がありましたが
無事終えることのできてよかったです。
又、町屋というさいたまにほど近いかいじょうまで足を運んでくださりありがとうございます。
今後も、楽園王をよろしくおねがいいたします。
Wonderlandの記事にコメントをいただきありがとうございます。吉田さんは楽園王の劇団員の方ですよね。
昨秋のBeSeTo演劇祭で「授業」公演を見逃してから、楽園王の公演は一度はみたいと思っていました。
今回は念願かなった初観劇でしたが、感激とまではいきませんでした。劇評以前の感想というか印象は、ご覧になったページに書いた通りです。
思いがあふれるステージだったので、共鳴できる人もきっといたと思います。ぴたり同期できたひとが少なくないことは理解できます。
卒論にニーチェを選んだひとりですが、それでも作・演出の長堀さんが描くニーチェ、あるいはニーチェの言葉が行き着く先をうまく感じ取れませんでした。そこで次作期待の表現になってしまいました。ご容赦ください。
ただ才能は疑いもなく、新作公演で実力のほどを味わってみたいと思っています。
長堀さんや団員のみなさまによろしくお伝えください。
ご活躍を願っています。
追記
返信メールが戻ってきてしまいました。コメントへの返事でご容赦ください。
楽園王『ELECTRIC GARDEN』
町屋という偏狭の地に楽園王IIXVIII公演「ELECTRIC GARDEN」を観ました。 とても綺麗ではある、私は好きなタイプだ・・・テクノイズな音楽のノリ+照明効果・・・抽象的な世界を場面展開で次々に語っていく。 半円形舞台で、中心の舞台を取り囲むように座った客席の後ろで…
ご紹介有難うございました。
デジログからあなろぐの吉俊です。
北嶋さんの文章を読むに、私が楽園王に感じた感覚と殆ど同じ印象を持たれたのだろうなと思いました。
才能は疑いも無くという言葉もまさに私が思ったことでもありますし、今後も注目するに値する劇団であると自負しております。
何かを足す必要があるというよりも、切り捨てればよいのではないかと感じています。
素人が言うべきことではないので、何をという事は書きませんが、期待は膨らむ作品であったと思います。
静岡で次回の公演があるそうですが、見に行きたいです。
学生の私には時間はあってもお金が無いので、無理ですけど・・・。
この度は有難うございました・・・今後ともよろしくお願いします。
メールすいませんでした。
間違えて、操作してしまいました。
ニーチェの哲学を描くのは余程難しいと
思いました。
実際、読もうとしましたが。。。
芝居と平行では難しいです。
次回のけいこがもう明日から始まります。
また、新たに切り替えやっていきます。
「メディア」何らかの形で静岡以外でやるかもしれません。
そしたら、ワタシのブログでも紹介いたします。