野外劇場公演を軸足に据えて30年。大阪を拠点に活動する劇団犯罪友の会の久しぶりの東京公演「手の紙」が新宿・タイニイアリスで開かれました(5月27日-30日)。破防法が適用された戦後最初にして唯一のクーデター未遂事件「三無(さんゆう)事件」を題材に取りながら、戦争と平和、ロマンとリアリズムの狭間に純愛物語を小劇場で成立させようとする舞台でした。
「ワニ狩り連絡帳」サイトは「正直言って、いったいどんなハチャメチャな舞台を見せてくれるのだろうか?などという期待があったのは確かなのだけれども、想像していたよりもずっとストレートな、直球勝負の舞台だった。とにかく、観終っての印象では、まずは戯曲としての完成度が高い」と述べています。
「関西に粋なおっちゃんがいる」というタイトルでレビューをまとめている「おはしょり稽古」サイトは「小劇場出身の劇団と比べると圧倒的に役者の芝居は大きい。笑いをとってもいい脇役の演技は特にそうだ。野外劇の特性を取り込みつつ、主役陣の抑えた演技で小劇場サイズの作品に仕立て上げている」と指摘しながら「しかし、やはり次回は、彼らの評判の野外劇を観てみたい」と結んでいます。
タイニイアリスのWebサイトに劇団の前触れが載っています。
昭和三十年代前半まだ街中に「平和」という看板がやけに目についた頃だった。
「平和時計店」「平和美容院」「平和ビリヤード」等、まだ「平和」という文字が人々の心の中に大きな意味を持っていた時代だった…。
明治維新後七十余年に太平洋戦争が始まり、敗戦から六十年を経て、第三、四世代の若者達がイラクの戦場に派兵されている。
そこには多くの人達が一片の肉の塊になって転がっている。
戦場には正義も大儀も聖戦もない。
ただ無数の死と悲劇があるだけなのに…幾度繰り返せばいいのか…。
流す涙なら「恋の行方」で流したい、この行く先の見えない時代にラブストーリーを作ってみました。
やるせない恋の行方の物語、楽しく笑って泣いてください。
「平和」という言葉をもう一度味わいながら…。
同じアリスWebサイトに主宰、作・演出を一貫して引き受けてきた武田一度さんの詳細なインタビューが載っています。実はぼくが急遽、公演直前にインタビューしたのですが、劇団の成立、活動、そしてコンセプトまで包み隠さず明らかにしています。ご興味のある方はぜひ、ご覧ください。
http://www.tinyalice.net/interview/0505takeda.html
[上演記録]
劇団犯罪友の会「手の紙」
☆作・演出=武田一度
☆出演=川本三吉 羽田奈津美 中田彩葉 玉置稔 デカルコ・マリー 小野正樹 金城左岸 山田山 瀧波四級