Critic Line Projectの竹内孝宏さんが「センター街」のレビューをまとめています。先に掲載したレビュー紹介に追加ます。
この作品を「デビュー作『お茶と説教』(1986年)と最新作『シブヤから遠く離れて』(2004年)のあいだにはさまって」いると指摘した上で、「そこで際立っているのは時系列的な連続性よりもむしろ断絶である」と述べています。初期作品に描かれたのがご近所という近隣関係が成り立つ場だったのに対し、「センター街」ではさまざまな階層が吸いこまれそのままダラダラと居ついてしまう「都市のブラックホール」「場ならざる場」に様変わりしたと言うのです。「これはあきらかに作家の時代認識であり、また80年代末から90年代半ばにかけてこの国が経験した地殻変動の演劇的要約であるといえる」と述べています。
なるほどこう読解してみると、だらしなく間延びした印象を与えていたいくつかの断片が、ある必然性を持って織り込まれたのだと推測が可能です。