新劇の伝統を誇る文学座と、現代口語演劇の先導役として知られる青年団の2劇団による自主交流企画シリーズが10日から始まり、5月末まで計6公演が東京都内の3会場で開かれます。東京の劇場で配布されるチラシ(案内)によると、企画の狙いは両劇団の「若手育成」と「観客にそれぞれの劇団を知ってもらう機会をつくる」ことにあったそうです。
シリーズ第1弾は、デビッド・ストーリー作「チェンジングルーム」です(こまばアゴラ劇場、5月10日-14日)。
炭坑街のラグビーチームの試合当日のロッカールームが舞台。オーナーと選手、コーチやトレーナーらとほかのメンバーの出身の違いが、試合前のあいさつや士気高揚のための雄叫び、ケガで運び込まれる選手、さらにすべてを冷めた目で見る雑用係などの人間模様から浮かび上がってくる作品です。
原作は1971年に英国で初演。米国ブロードウェーでも上演されました。日本では文学座の坂口芳貞演出で83年と89年に上演されています。今回はフラジャイル出身の桜井秀峰(青年団)が演出。出演者は両劇団のメンバーら。
戦前からの伝統を受け継ぐ文学座は1997年の創立60周年記念企画のアトリエ公演で、青年団を主宰する平田オリザの作品「月がとっても蒼いから」を上演し、2000年に再演しています。また今回の企画を進めた坂口(文学座)と平田は最近まで、桜美林大学教員の同僚で、双方の劇団からも同大に講師を派遣するなど団員レベルの交流もあったことなどから自主交流の企画が生まれたとのことです。
ほかの公演は以下の通りです。
▽平田オリザ作「忠臣蔵」、演出は戌井市郎(文学座)。こまばアゴラ劇場、5月16日-21日。
▽ミシェル・ビナベール作「職探し」。演出はフランスの新進演出家アルノーム・ムニエ。こまばアゴラ劇場、5月26日-31日。
▽李康白作「卵」、演出は藤原新平(文学座)。サイスタジオコモネA、5月11日-17日。
▽ジョン・パトリック・シャンリィ作「お月さまへようこそ」、演出は森さゆ里(文学座)。サイスタジオコモネA、5月25日-31日。
▽松井周作・演出「地下室」。アトリエ春風舎、5月18日-28日。
問い合わせや詳しい公演情報、予約方法などは青年団自主企画交流シリーズのページをご覧ください。http://www.seinendan.org/jpn/info/index.html
【追加私記】
アゴラの支援会員は注意が必要です。「P」の付いた会員番号のメンバー(特別賛助会員)はこのシリーズだけでなく、アゴラ劇場以外の公演は無料で入場できないそうです。今年から制度が変わりました。事前に予約して出かけたら、会場受付で断られて分かりました。がっくりです。会員番号を伝えて予約しているのに事前に連絡してくれればわざわざ来なかったと嫌味を言って卑しき品性をさらしたこともあってか、いささか落ち込んで最寄りの書店で大著を何冊かヤケ買いしてしまいました。とほほ。アゴラ劇場+青年団と長い付き合いですが、がっくりととほほ体験は初めて。会員の方はご注意ください。(2006.5.14)
これから折にふれ、レビューのほか小劇場関連のニュースやシンポジウムなどの報告も掲載する予定です。ご期待ください。