アトリエセンティオの8年

稽古場+アーティスト支援

−二人が契約して、劇団が使い始めた。どういう使い方だったんですか。

narumi02鳴海 原則的にはユニークポイントと第七劇場の作品創作の場所・稽古場としてアトリエを使う。空いている期間は、知り合いの要望があれば使ってもらう。ただしサービスとしてのレンタルではなくて、せっかく私たちアーティストが運営しているんだから、アーティストがアーティストに対して支援するというスタンスで使っていただく。こんな優先順位でアトリエを運営してきました。

−それはずっと一貫してるんですか。

鳴海 最初からそうでした。

山田 本末転倒にならないように(笑)。気がついたらレンタル屋さんになっていたというのは嫌でしたから。

鳴海 金儲けではなくて。例えば3週間使いたいというような、他のところではなかなか実現できない使い方や、アーティストや作品作りを支えられるような場合、私たちは協力するという姿勢です。

−長期間稽古場として使いたいという希望は多いですか。

山田 最近では借りるのは「いつも使う団体」だったね。

鳴海 そうですね、長期間で使うカンパニーは限定的でした。

−公的な施設だと、長期間の使い方はできないのですか。

鳴海 例えば公民館などの公共施設だと、まず予約回数に制約がある。さらに、午前・午後・夜間の区分がある。そうすると、終日押さえて、かつ何日間も使うことが、平等性の問題からできない。民間の劇場となると、例えば3週間押さえるだけでも大きな費用になる。そうすると、稽古場代を安くしてその分をクリエイションに回してもらえるなら、アーティストのためになるだろうと考えました。

yamada02山田 24時間使えるのが、何よりも強いですね。例えば、蛍の光が流れる中では、落ち着いて買い物をすることなんできませんよね。音楽が流れてくれば身体はもう後ろ向きになる。退館時間が決まってるとはそういうことなんです。常に時間を見ながら稽古をしなくてはならない。アトリエは退館時間を気にしなくてよかった。私にとってはそれは極めて大きかった。もちろん道具も置きっぱなしにできます。

−二人の公演はそれ以降、センティオが多くなったんですか。

山田 (笑)いや、そうでもないんですね、センティオでもやってるんですけど。公演自体は、センティオでの公演は3割くらいかな。

鳴海 第七劇場は8年間で2回しかやってないですね。

山田 エーッ、センティオでそれだけ(笑)。

鳴海 ちょうどアトリエを始めた2006年ごろから、第七劇場のポリシー・ベクトルとして、東京から離れる選択をしていました。アトリエは作品を作る工場で、それを輸出していくようになった。それができるようになったと言う意味ではアトリエの存在は大きかった。自分たちのベースキャンプがある、そこで作品を作り、海外なり日本各地へ作品を持って行く。戻って来る場所が必ずある。東京から離れて公演をするというポリシーをとるにしても、アトリエがあるメリットは大きかったですね。

山田 うん、うん。そうですね。

−鳴海さん、山田さんのそういう体験は周囲のアーティストにも伝わるわけですね。

鳴海 そうですね。仲間のアーティストには活動の姿を見てもらってますし、2008年にSENTIVAL!が始まって以来、そこに集まってくれたカンパニーやメンバーには伝わっていると思います。

−そのあと、拠点を持ちたいと相談されたり、一緒にやりたいと言われたりしたことは。

山田 なかったですね。

鳴海 例えばSENTIVAL!に集まってくれるカンパニーは、関東以外の地域のカンパニーが多くて、以前アゴラでやっていた大世紀末演劇展みたいな感じでした。関東以外の地域の人が東京で公演をするときに、交通費と宿泊費が予算的に大きな額になってしまう。でもSENTIVAL!なら環境は良くないけれど、そこに泊まることもできる。そういうことを考えると、関東外の人が関東で公演をするときの、ひとつの選択肢として有効に使ってもらった部分もあったと思います。拠点を持ちたいんだけどという相談はあまりされたことがないですね。ただ、家賃はよく聞かれましたね。

山田 ああ、いくらですかってね(笑)。

−では、聞いてみましょうか(笑)。家賃はいくらでしょう。

山田 16万円です。

− それを二人で折半したのですか。

鳴海 基本的には折半です。

山田 劇団から毎月倉庫費として入れてもらったり、あとは使っていただいたカンパニーからや、劇団からの稽古費などの収入があって。その赤字分を折半ってことですね。

鳴海 8年間やってきて、毎月赤字です(笑)。金儲けとしては全く機能していない。だから、私たちが拠出して、お互いのカンパニーにとっていい場所であり続ける、他のアーティストにも協力できる場所であり続けることを頑張って維持してきたってことですね。

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