振り返る 私の2012

高田匂子(主婦)

  1. 劇団匂組「あかつき」(大森匂子作 三浦剛演出)
  2. 劇団桟敷童子「泳ぐ機関車」
  3. 劇団こふく劇場「水をめぐる2」

「あかつき」公演チラシ

 私は芝居の台本を書いていますが、観るときは、芝居好きのおばさんとして観るようにしています。
 1.は、私が主宰する劇団「匂組」の作品ですが、自画自賛ではなく心から劇作家、大森匂子の想いが詰まった芝居であった、と思う。
 2.は、この劇団には、芝居の原点があると思う。コヤへ向かうときのワクワク感とか、観ているときの、ドキドキ感とか、観終わった後の軽いめまいのようなもの…大変だろうけれど、おもわず頑張れ! と思ってしまう…。昔、昔、花園神社へ向かうときもこんな感じだったなあ…。
 3.は、2とはまた違った意味で演劇の原点が感じられた。前回みのがしてしまったため、再演(こまばアゴラ劇場)ですが、アゴラが世界と思えるほど衝撃をうけた。今年はみのがしてしまった作品の再演が多くあったので、それらを観てまわりました。
 この3本には入らなかったけれど、心ふるわせるものがたくさんあって幸せでした。マキノノゾミ「高き彼物」、詩森ろば「記憶、或いは辺境」、やはり東憲司の「軍鶏307」等です。それから、私が「方の会」に依頼されて書いた「清川虹子のこと・泣いて笑った私の人生」も心に残っています。
(年間観劇数 132本)

宮武葉子(会社員)

  1. 平成中村座「小笠原騒動」
  2. 劇団スタジオライフ「PHANTOM 語られざりし物語」
  3. E-Quest Company「ハイライフ」

平成中村座公演チラシ

 男ばかりの芝居が並んでしまいました。別に意図したことではないのですが。
 1.まさかこれが勘三郎丈の見納めになるとは……という嘆きとは別に、仮設劇場の合理的な作りに感動した公演でした。って、芝居の内容じゃないのか。
 2.ひたすら舞台美術の力に圧倒された。シアターサンモールがパリ・オペラ座になっていたよ…ってこれも芝居の中身の話じゃないじゃないか。
 3.好きな戯曲なので、なるべく見に行くようにしてるんですが、割としょっちゅう上演されるので、なかなか追い切れません。今回のカンパニーは若くて勢いのあるところがよかったなと。技術についてはともかく。
 あ、1~3は評価順ではなく、単に見た順です。
(年間観劇本数 約100本)

大泉尚子(ワンダーランド)

 1. 劇団子供鉅人「幕末スープレックス」
 1. ポツドール「夢の城」
 3. 梅棒「スタンス」

「幕末スープレックス」公演チラシ

 まったく傾向の違う三本を選んだのは、それぞれが独自のこだわりを追求し尽くした舞台だから。間違っても、今、求められてるものは何か? 的な発想で作られた作品ではない。
 1.「幕末スープレックス」には、エンターテイメント性と尖がった問題意識が相殺し合わず丸ごとゴロっと内在している、その凸凹感が希少。同率1位の「夢の城」は赤裸々な場面の連続の中に、“性を描いている”のではなしに“性で描いている”世界の荒々しい質感が迫る。何度見たとしても段取り芝居には陥らない。芸術だからという理由ではなく支持したい表現があるのだ。ダンスの素朴な楽しさと演劇への初々しい憧れがいっぱいに詰まった3.「スタンス」。梅棒は、もっともっと多くの人に見てほしい。
 その他では、番外というには恐れ多いが、大胆かつ緻密な構成で見せた大河劇・ナイロン100℃「百年の秘密」、はこぶねという器でこその濃密な劇空間を展開した庭劇団ペニノ「誰も知らない貴方の部屋」、脚本にも演者にもキュートな魅力満載の甘もの会「はだしのこどもはにわとりだ」、女子の身体と心のやらかいとこに真っ向から斬り込んだQ「プール」「地下鉄」「虫」など。
(年間観劇本数 約150本)

夏目深雪(批評家・編集者、個人ブログ「幻燈機」)

  1. BATIK「おたる鳥を呼ぶ準備」(ふじのくに世界演劇祭2012)
  2. 相模友士郎「天使論」(TPAM in Yokohama)
  3. 村川拓也「ツァイトゲイバー」(東京国立近代美術館「14の夕べ」)

「おたる鳥を呼ぶ準備」公演チラシ

 いずれも「演劇」の境界線をなぞるような、或いは思い切って超えてしまうような、それぞれに、胸を衝かれ、陶然とした三本。つまるところ、そこに生身の身体があり、踊っていたり動いていたりして、十二分に想像させたり妄想させたりするものであり、自分の性についてこのうえなく深く実感させられたり(1)、日常とダンス(演劇)の「あいだ」について考えを巡らせられたり(2)、自分が属しているようで属していない世界との橋渡しとして果敢な実験を、観客にとって重要な体験をさせようとしているもの(3)であったりすれば、優れた戯曲や優れた演技などなくても、私はいいのかもしれない。果敢な挑戦を、来年こそ私もと思いつつ。
 他にはかもめマシーン『パブリックイメージリミテッド』、チェルフィッチュ『現在地』、三条会『ひかりごけ』、三浦基(地点)『光のない。』、ポツドール『夢の城』などが印象に残った。
(年間観劇数 57本)

三田村啓示(俳優/空の驛舎/C.T.T.大阪事務局/演劇情報誌ニューとまる。

  1. dracom「弱法師」
  2. AI・HALL自主企画〈北村想の座標/現在〉「この恋や思いきるべきさくらんぼ」夏Ver.
  3. WI’RE「ひとがた #1」

「弱法師」公演チラシ

 順位は特になく観劇順。3つに絞るのは余りに難しいこともあり、関西「のみ」で上演された作品の中で選んだ。無論私自身が出演した作品も除いた。
 1はミシマユキオをアカツカフジオで脱構築して魅せるとこうなる、とでも言うべきアナーキーな怪/快作。2は04年初演作の再演だが、俳優のからだを通し語られる「食うため」の営みとしての芸術の有様には、今だからこそ静かだが強い説得力を感じた。そして3。来年2月のアトリエ劇研演劇祭参加に先駆けての小品という趣ではあるが、同じ座組(サカイヒロト+黒子沙菜恵)での昨年の3ヶ月にわたる連作の成果が結実した印象がある本作は、近年増えているカフェ/オルタナティヴ・スペースでの上演の中でもその必然性として群を抜いている。その他、桃園会「中野金属荘、PK戦(再演)」、劇団態変「一世一代福森慶之介ゴドーを待ちながら」なども強く印象に残った。
(年間観劇数 約70本)

武藤大祐(ダンス批評家)

  • 高嶺格「ジャパン・シンドローム ~step2.“球の内側”」
  • 新長田のダンス事情(仮称)
  • 珍しいキノコ舞踊団「ホントの時間」

「ホントの時間」公演チラシ

 観客の身体を巻き込みフィジカルかつグローバルな出来事を作り出した高嶺格がとにかく素晴らしかった。ダンスボックスの「新長田のダンス事情(仮称)」も身体とローカリティをめぐる先鋭的な試みで非常に刺激的。依然としてダンスが弱っている中で今最高に輝いているのが珍しいキノコ舞踊団。その他にチェルフィッチュ『現在地』、contact Gonzo『Abstract Life《世界の仕組み/肉体の条件》』、ダニエル・コック・ディスコダニー『ゲイ・ロメオ』の三本が鋭く尖っていた。三浦宏之による北村成美『うたげうた』のリバイバルは稀に見る濃厚なダンスで忘れ難い。勅使川原三郎『DAH-DAH-SKO-DAH-DAH』は時宜を得た再演。オン・ケンセン『キリング・フィールドを越えて』、ネイチャー・シアター・オブ・オクラホマ『ライフ・アンド・タイムズ―エピソード1』は噂通りの傑作だった。そしていかなる文脈からも外れた所で劇団どくんご『太陽がいっぱい』を忘れるわけにはいかない。
(年間観劇数 約160)

山内哲夫(100字レヴュー

  1. 五反田団といわきから来た高校生「チャンポルギー二とハワイ旅行」
  2. THE SHAMPOO HAT「一丁目ぞめき」
  3. 城山羊の会「あの山の稜線が崩れてゆく」

「一丁目ぞめき」公演チラシ

 今年は個人的に人生の重大イベントが続いて本数急減。それでも傑作にいくつも出会えて、小劇場の活況を実感した。次点はマームとジプシー「ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景」とチェルフィッチュ「女優の魂」といったところ。ほかに、ろりえの復活、松尾スズキの精力的な舞台活動、1人芝居が圧巻だった。ハイバイの岩井秀人も充実の1年で「霊感少女ヒドミ」など映像活用が冴えた。選んだ3本については、五反田団が宮本武蔵も素晴らしかったが、いわきの高校生とつくった震災後を代表する傑作の登場にひれふす。友達と離ればなれになる日常が強烈なリアリティ。「一丁目ぞめき」は岸田賞祈願で強引に入れた。 あのダメダメな世界観は見事。そして不条理親子別離劇の新しい傑作が城山羊から。新たに起用した父娘が大当たりだった。ダンスではプロジェクト大山の台頭、BATIKの気合い、珍しいキノコ舞踊団も活発だった。一方で、モモンガ・コンプレックスはフル公演なく物足りなさも感じたので新年に期待。
(年間観劇数 107本)

桜井 圭介(音楽家・ダンス批評)

  1. マレビトの会「マレビト・ライブ東京編/N市民 稲光は東京スカイツリーに兄のファルスを見た」
  2. 飴屋法水/WOSK presents vol.12「 core of bells ×飴屋法水 × 小林耕平」における上演(2012年8月4日@六本木 SuperDelux)
  3. core of bells /「CE QUI ARRIVE2012」における上演(2012年11月24日@六本木SuperDelux)

「CE QUI ARRIVE2012」チラシ

 1.は、野外や民家などの「非・舞台」空間における特殊な上演でありながら、なおかつテクストと配役に沿った厳然たるrepresentation 表象代理/再現前、即ち徹底的なまでに「演劇」なのであった。表象が表象のまま現実に差し挟まれたような特異な磁場を形成しており、大いなる可能性を予感した。
 2.は、三者それぞれの“独立した”上演の同時並行的遂行であったが、飴屋は姿を現さないままで、マイクを通して、アガッた息の音とともに「私は、今、壁に掛かっているTシャツの目玉(のイラスト)から見ています」とか「今、私は、(会場に散乱した段ボール箱の一つの)ネギと書かれた箱の中にいます」などと偽の所在(”Present.”)を呟き続けた。不在と現前、声という現前による表象=再現前、恐るべきイメージ操作。
 3.は「反復」という「形式操作」によって、ハードコアバンドの音楽演奏でありつつ、演劇的というしかないパフォーマンスを出現させていた。不思議だ!
(年間観劇数 約90本)

中西理(演劇舞踊批評、AICT関西支部長)

  1. 木ノ下歌舞伎「義経千本桜」(京都芸術劇場・春秋座)
  2. KUNIO10「更地」(京都・元 立誠小学校)
  3. 青年団「三人姉妹」(吉祥寺シアター)

「義経千本桜」公演チラシ

 2012年も年頭に藤田貴大(マームとジプシー)が岸田戯曲賞を受賞するなど引続きポストゼロ年代の若手作家らの活躍が目立った。なかでも台頭が著しかったのが京都の杉原邦生。通常はこのベストアクトでは1人1本と決めているが、今回は通し狂言で自らを含め持ち味の違う3人の演出家(杉原、多田淳之介、白神ももこ)を起用、プロデューサーとしての手腕が光った木ノ下歌舞伎「義経千本桜」、太田省吾の代表作をまるで「わが星」のように演出したKUNIO10「更地」の2本を選んだ。ロボット演劇の集大成となった平田オリザ「三人姉妹」も今年の収穫だった。
(年間観劇本数 150本)

堤広志(舞台評論家)

  1. シベリア少女鉄道スピリッツ「太陽は僕の敵」
  2. カムカムミニキーナ「ひーるべる」
  3. 世田谷パブリックシアター/せたがや文化財団「南部高速道路」(長塚圭史構成・演出)

「太陽は僕の敵」公演チラシ

 1は土屋亮一には珍しく社会性のある意欲作。3・11後の原発問題(電力不足や労働格差)に真っ向から切り込み、電気照明なしでは成立しない近代以降の演劇を根底から捉え直す。その先に核以後の世界が舞台の『北斗の拳』のサブカルネタへアクロバティックに接続する「贅沢なオチ」が圧巻で、シベ少最高傑作と呼びたい。2は松村武の奔放なイメージが横溢。古事記の中では顧みられないヒルコをモチーフに、望まれぬ生・捨てられた命の側から世界へ報復するドラマを描いた(裏テーマは幼児虐待か)。表題はその魂鎮めに唱えられる祈祷の言葉で、古来伝わる御霊信仰を踏襲する。宿命や怨念を越えてラストは「人の死を悼み、生を寿ぐ」近年稀な感動があった。今年実母を亡くしたことが松村の劇作に影響したようだ。3は無名時代から不条理(べケットやイヨネスコの不条理劇ではなくカミュのような)を描く傾向が強いと思っていた長塚圭史の演出。生まれてきたこと/生きていくことの不確かさ/理不尽さが高速道路の大渋滞から抜け出せなくなった人々の共同生活の中に描かれる。奇しくも震災の被災者の状況にも似て現実感と切実さが強く感じられた。他に優作あれど字数の制約でここ迄。
(年間観劇数 234本 予定)

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【注】
・記憶に残る3本は「団体(個人)+演目」を基本とした。必要に応じて劇作家、会場、上演日時などを追加した場合もある。
・団体のWebページがなかったり変更されたりするケースがあるほか、簡単な操作で各自が当該ページを検索できるようになったことを考慮して、今回は劇団や演目へのリンクは張らなかった。
・ツイッターのアカウント情報などはコメント末尾に掲載した。
・公演の画像情報は3本のうち最初の公演から。チラシ画像が入手出来なかったり先に掲載されている場合などはその次の公演から取り上げた。

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