連載企画「外国人が見る小劇場」第5回

独自の世界観が魅力
 ウルリケ・クラウトハイムさん(ドイツ)

日本語プログラムで来日

 -来日したのは大学留学ですか。いつころだったのでしょう。

 クラウトハイム 2004年です。基本的には留学ですけど、その前はドイツで社会人生活を送りました。大学でドラマトゥルギーを専攻して、卒業してからある都市のとても小さな劇場で働きました。演劇のプログラムを担当していましたが、小さな劇場ですので、アーチストと交渉して制作現場を回す仕事など、何でもしていました。元社交ダンス場だった劇場です。

-公立劇場ですか。

クラウトハイム いえ、民間でした。私もとても若かったので、やりたいことはありましたが、劇場にお金がない。そして…。

-何かあったのですか。もしかして、アヴァンギャルドなことをしたり…(笑)。

クラウトハイム そうなんです(笑)。大学を卒業したばかりですから、こんなおもしろいことをすれば、みんなが喜ぶだろうと思ったんですね。そういうナイーブなスタンスでやっていたら、前からその劇場に出入りしていたアーチストたちとの関係が難しくなったり、町の新聞からも攻撃されたり…。1年半ほど活動したのですが、とても疲れてしまいました。日本に行きたいと漠然と思ってはいたのですが、日本は生活費が高いでしょう。劇場でいろいろあって力尽きかけたころ、日本人の友人がある語学プログラムを勧めてくれたのです。それは1年間日本語を学ぶプログラムで、半年はテュービンゲン大学、半年は京都の同志社大学で学ぶ内容でした。

 

【写真は、ウルリケ・クラウトハイムさん。撮影=ワンダーランド 禁無断転載】
【写真は、ウルリケ・クラウトハイムさん。撮影=ワンダーランド 禁無断転載】

-それまで日本語は…。

クラウトハイム 12ヵ月だけほんの少しかじったことはありましたが、それだけです。そのプログラムに奨学金が付いていたので京都に来ることが出来ました。

-すぐに日本の芝居をご覧になったのですか。

クラウトハイム そのときは日本語が出来なかったので、一度はトライしてみたのですが、うまくいきませんでした。ドイツはこの劇場がいいと思ったら、その劇場のプログラムを見ます。日本だと、いろんな劇団があって、その劇団の公演をいろんな劇場に見に行くことになります。劇場に行くとチラシがたくさんありました。その中からとってもポップなチラシを見て、若い人たちの芝居だと思っていったら完全にせりふ劇で、これはダメだなと思ってしばらく止めました。あと伝統芸能の文楽や歌舞伎を少し見ました。

-いかがでしたか。

クラウトハイム すごく惹かれました。来日前に日本の伝統芸能に魅力を感じていました。ドイツの演劇は19世紀の後半から、いわゆるリアリズムを背景にして成り立っています。そうでないものにすごく関心がありました。実際に見ると、魅力的ではあったんですけど、その奥には絶対は入れないと感じました。奥まで入るほどの関心は持てませんでした。奥に入ろうと思えば、ある意味で「マニアック」にならないといけないような気がしていました。

-京都で日本語を勉強したあとは…。

クラウトハイム 1年勉強しましたが、日本語は全然出来ませんでした、やっぱり(笑)。これで帰国するのはもったいないと思って、幸い語学プログラムを半年延長することが出来ました。その後、愛知万博で働きました。その後20061月から東京に住むようになりました。

チェルフィッチュに出会う

-演劇の仕事はいつころから始めたのでしょう。

クラウトハイム 東京に来たと言ってもまだ、日本語がそれほど出来ません。それで知人に薦められ音楽事務所に2年半ほど勤めました。70年代、80年代に武満徹さんたちが所属していた事務所です。商業的なことは扱わないので、どうやって食べていけるのだろうかと思いましたけど(笑)。

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【略歴】ulrike08
ウルリケ・クラウトハイム(Ulrike Krautheim)
 ドイツ・ヴォルムス生まれ。2000年、ライプツィッヒ音楽・演劇大学「フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ」ドラマトゥルギー科卒業。現代芸術の国際的センターとして知られるPodewil芸術センター(ベルリン)とカンプナーゲル(ハンブルク)でのドラマトゥルギーアシスタント業務を経て、2002年からライプツィッヒのSchaubühne Lindenfels劇場で演劇部門のキュレーターを務める。2003年10月~2005年2月、テュービンゲン大学日本語集中プログラム参加、京都の同志社大学で日本語を学ぶ。その後、愛知万博ドイツ館・文化担当、音楽事務所「東京コンサーツ」で制作業務、「フェスティバル/トーキョー」海外制作を経験。現在フリーランスとして活動中。


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