初日レビュー2010 第4回 コマツ企画「どうじょう」

コマツ企画「どうじょう」公演チラシ 「初日レビュー2010」第4回は、コマツ企画の現代劇「どうじょう」を取り上げます。コマツ企画公演は今年になって三作目。毎回違った素材を巧みな手法と凝った仕掛けで観客に見せてきましたが、今回はさて…。以下、8人の五つ星評価と400字レビューをどうぞ。掲載は到着順。(編集部)

 

水牛健太郎(ワンダーランド)
★★★★☆(4.5)
 新橋のデートクラブを舞台にしたバカバカしくも感動的な風俗喜劇。世の中すべてカネとイロという身も蓋もない真実、でもだからこそカネとイロとの交換の場に他者からの承認を、理解を、そう同情を、図らずも求めてしまう不器用な男女たちの物語。個性豊かな俳優陣が素晴らしい。特に、少なからぬ屈託を淡々とした表情に包み込むオカベ役の町田水城、したたかさと純粋さが矛盾なく同居する桐野役の斎藤加奈子の二人の店員役が秀逸だった。作・演出の小松美睦瑠の出演シーンは、それ自体は面白いのだが、歴然と役者とは違う意識の持ち主が突然舞台に現れる唐突感がある。その違和感をも利用し、実在の芸能人への言及で客席を湧かし、最後に客席を巻き込む仕掛けへとつなげていく演出プランはわかるが、本当に成功していたかは微妙だ。と言いつつ、あの大団円に0.5点追加。甘いのはわかっているが、十年来の椎名林檎ファンである私に、他にどうしろと…。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ma/mizuushi-kentaro/

 

宮本起代子因幡屋通信発行人
★★★
 「会員制デートクラブ」というのだろうか、その事務室が舞台である。食事までか、それ以上の交際かを女性会員が希望ランクをつけ、男性会員は好みと懐具合でデートを申し込むシステムらしい。スタッフも客も相当な過去や背景を持っているらしいが、それらが次第に明かされるわけでもない。特定の主人公、主筋や副筋もあるようなないような。話が最終的にどうなったのか、そもそもなぜこの人が登場するのかわからない人物もあり、しかしとりとめない日常会話の冗長な緩さはなく、客席は爆笑の連続であった。会話の細部の巧みさは作者の筆が達者であり、出演俳優の演技が確かなことを充分に伝えるものである。作品のテーマは何かとつい前のめりになってしまう自分は大いに笑いながらも、「このままでは済まされまい」と妙な危機感を覚えている。さて初日の今夜、終幕はまさかのオールスタンディングになった。その理由と仔細は書けないが、明日以降の終幕がどうなるのか、秘かな楽しみができた。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/a/inabaya-kiyoko/

 

藤原央登(劇評サイト『現在形の批評』主宰/[第三次]『シアターアーツ』編集部)
★★
 なぜ、椎名林檎『ありあまる富』を流し、観客を立たせて熱唱させたのだろうか。この曲のサビは「もしも彼が君の何かを盗んだとして それはくだらないものだよ 返して貰うまでもない筈 何故なら価値は生命に従って付いている」というもの。あらゆる価値に先立つ、生の絶対的な肯定を歌う曲は良い。聞けば感傷的にもなるしメッセージ性もある。しかし、この舞台はそれまでにはっきりとそのことを語ってはいない。
 愛人バンクを生業とする事務所。そこに登録する女と金で買う男。彼らは様々な思惑と欲望の基、即物的なやり取りを交わす。セックスまでなら3万~4万円、食事だけなら1万円と自己に値段を付ける女と、1万で何とかセックスしたい男との無機質で冷淡なやり取りは確かにドライなおかしみがある。その一方で、金に転換できない生の重みや、自己変革への希求を吐露したりもする。 果たして、作り手が立脚点とするのはどちらなのか、それが見えない。いや、両者の間で揺れ動くのが人間なのだ、というならそれでも良い。ならばなぜ、椎名林檎で感傷的にさせたのか。
 そこに辿り着くまでの、作り手側の意志が曖昧である。だから観客参加を促し、情緒へと収斂させる手つきに、何段も階段を踏み飛ばしているような疑問を抱くのである。 結果私は、一緒になって立ち、歌いはしなかった。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ha/fujiwara-hisato/

 

カトリヒデトシ(「カトリヒデトシ.com」)
★★★★
 楽しく見れた。笑わせておいて、下世話な話を展開するところから、ぬるっと「生」の深みへ降りて行く時に、このカンパニーの良さが最大に発揮されるが、今回はそれがよく現れた。役者の見所が多かった。はえぎわ町田水城のうまさ、重厚になってきたと思う。ろりえ斎藤加奈子の力強く立ったキャラも大変感心した。自分の論理でいらだっていき、泣いてしまう、というプロセスは面白かった。ZOKKY小林タクシーの二度と見れないかもしれない二枚目ぶりはいいもの見せてもらった、と思えた。乞局墨井鯨子の不思議な周波数の声を使う、危うい、不思議な感じは磨きがかかってきた。殺陣師佐野功の最近とみによくなったストレートプレイ。セリフがほとんどない佐々木潤の存在感だけの芝居。動物電気政岡泰志の持ち味をふんだんに使った演技、もちろんコマツに欠かせない団員本井博之も十分な魅力を見せつけてくれた。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ka/katori-hidetoshi/

 

高橋英之(ビジネスパーソン)
★★★★★
 笑わせてくれます[100%保証]。ちょっと後ろめたいドキドキ感があります[90%保証]。「私は2万じゃなくて3万なのよ」的なセリフの群れと、「お金じゃない」という対抗的なセリフと所作が、フーガのように絡み合う中、風俗まがいの店を舞台とする露悪趣味的なこの作品のリアルさが、むしろ貨幣経済にからみ取られた現代社会を照射するメタファーに思えてきます[共感率予想50%]。
 魅力は、ズラリとそろった怪優たち。無駄な出演者ゼロ[80%保証]。あえて一人選ぶなら、携帯女・内田役の墨井鯨子さん[これには出演者の数だけ異論あることでしょうが…]。登場すると同時に危ないオーラがあふれ、どんどんエスカレート、もう最後の方は「内田」という役名がでるだけでホラーショー!
 そして、「なんじゃこりゃ?」「なるほど!」と思わずうなってしまう演出は、最後に観客に向けた挑戦状をたたきつけてきました。おかげで、自分はもう1回観に行くことになりそうです。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ta/takahashi-hideyuki/

 

杵渕里果(保険販売)
★★★
 窓を開けたバイト娘が「新橋のこっちがわってなんかクサイ」と呟く、雑居ビルの素人売春斡旋クラブが舞台。渋谷・新宿でなく新橋なのがミソ。新橋。なんか昭和クサイ、おじさんクサイ。“セックスに現れる人間の本質”“カネ以外の大事な何かへの羨望”といった古めかしいテーマが弄されるが新橋ならまぁ、ありかも。テレクラなどソフトな風俗界隈でいかにも生じそうな初対面の素人の、いいカンジそうでイイ加減な駆け引きの芝居が面白い。スラップスティックな売春をめぐる男女の追いかけっこは一見キワモノにして展開は温厚。作演出の小松美睦瑠は配布物でタイトル『どうじょう』について、同情、道場、同乗…様々に考えられると問いかけるが、青春道場・人生道場の一幕劇にみえた。関心ある異性を誘えば、誰でも性を売買しうる事実、カネだしてでもヤリたい人々の気配が二人を包むこと必至。相方のHの感性を刺激する効果アリ。同乗の可能性に★1追加。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ka/kinefuchi-rika/

 

都留由子(ワンダーランド)
★★★☆(3.5)
 そんなにお洒落とも思えない、どちらかというとぱっとしない、でも、結構お客も多い新橋の会員制デートクラブ事務所。出入りする男女の客とふたりの従業員のあれこれが描かれる。自分に値段をつける女、つけられた値段を手がかりに女を選ぶ男。そこから現われるもの、それではすくい上げられないもの。舞台は瞬時も飽きさせず、大笑いの連続で、あっと言う間に終わってしまった。役者もみんなパワフル、上々の出来。快演、怪演、好演の配役もすばらしい。
 ただ、見終わったときはとても面白くて、もうそれで十分だと思えたのだが、興奮が冷めてみると、ん?だから?と思ってしまった。心に残るやりとりもあり、あ!と思う台詞も確かにあったのだけれど、コツンと残ってあとまで考えてしまうものをキャッチできなかったのが、何とも残念。ないものねだりだろうか?もちろん、そんなものがなくても、ひと晩の楽しみとして、すてきに面白かった。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ta/tsuru-yuko/

 

大泉尚子(ワンダーランド)
★★☆(2.5)
 ああいうところを何と呼ぶのかわからないけど、舞台は風俗系の事務所。女の子は登録制、男性客が写真リストを見て選び、2人で外で会って、後は〈自由恋愛制〉、じゃなく〈自由援助交際制〉? 女の方は自分で星をつけることになってて、星1個が1万円。たとえば「この子は★食事のみ」「あの子は★★★最後まで」など(星をつけるのは初日レビューと同じ。あちらは自己申告制でサクサク決めてたけど、こちらは他人様にだし、判断にかなり悶え苦しむ!)。そこに勤めている男女、客、女の子、出入りの内気なヤクザ(!?)などが入り乱れてのやりとりは縦横無尽、関係のバリエーションも多彩。世の中、所詮色と欲とは言い条、ピュアな想いが入り込んできたり、と思えばやっぱし金かよ、いやー、とも言い切れねえか…とかとか。駆引き綱引きシーソーゲームがこれでもかこれでもかと。ただ、ある種の極みを絶妙に描いているのだけれど、客席側としては(舞台設定やモチーフ云々ということではなく)どこに身を置いていいか迷いが生じた。口は反射で笑ってしまうけれど、体が反応しないというか。詳しくは書けないのだが、最後にちょっと機会を与えられて思わず動いてしまったのは、参加したというより、固まってた体をほぐしたかったというのが、正直なところ。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/a/oizumi-naoko/

 

【上演記録】
コマツ企画 現代劇「「どうじょう」」
下北沢・OFF OFFシアター(2010年10月23日-31日)
【CAST】
本井博之 小松美睦瑠
政岡泰志(動物電気)
町田水城(はえぎわ)
佐野功
宍戸香那恵(ユニークポイント)
斎藤加奈子 (ろりえ)
小林タクシー(ZOKKY)
墨井鯨子(乞局)
佐々木潤
松本美奈子

【STAFF】
作・演出 小松美睦瑠
舞台監督 藤田有紀彦
舞台美術 泉 真
音響 志水れいこ
音響操作 高橋真衣
照明 工藤雅弘(Fantasista? ish)
宣伝美術 成川知也
制作 安田裕美
企画協力 嶌津信

料金 前売2500円  当日 2800円(日時指定・全席自由)
☆初日10月23日(土)19時半と27日 (水)14時の回は、割引き料金。前売2000円 当日 2200円
※リピーター割引制度あり


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