連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」 第8回

||| 民間だが公共の劇場でありたい

-こちらは、いつでも何かしら活動をなさってますよね。今月は何もないということもありますか。

中島 そうですね、ほとんどないと思います。

-貸し館事業もしていらっしゃるんですか。

中島 ないですね。ときどきそういう話も来るんですけど、正直言って、料金をいくらにするんだ? というのもあってね(笑)。基本的には、うちでやるものは全部主催事業で、ということにしているんです。

-他の劇場との提携とか連携、共同製作のようなことはなさっていますか。

中島 まだやっていません。他の劇場で作ったものを招聘することはあります。そういうことも全然考えていないわけではなく、やる気はあって、少しずつ進めてはいます。具体的には、韓国の劇団と共同製作の話をしています。国内の劇場とはまだありません。将来的にはあるかもしれませんね。

-韓国の劇団とは、一緒に作って両方で上演するということですか。

中島諒人さん中島 去年、鳥の演劇祭3で呼んだティダという劇団なんですが、僕らと同じ世代で、ソウルで活動していたのが、彼らも江原道(カンウォンド)という田舎に移って、廃校で活動を始めた。さらに、偶然にも鳥取県と江原道というところは、姉妹県みたいな関係なんです。彼らも僕の作品を見たりして、何かやろうねっていう話になり、来年度から3年計画でやろうということになっています。彼らのやる演劇祭の1回目が2011年の7月にあるので、それに上演に行ったりして、一緒にいろいろ考えるためにトータルで2週間くらい向こうにいる計画があります。ファッチョン演劇祭だったかなあ。

-ところで「鳥の劇場」というのは、劇場=場所の名前でもあり、劇団=創作集団の名前でもありますよね。それは今の日本では珍しいケースに思えますけど、あえて同じ名前にした理由はなんでしょうか。

中島 ヨーロッパだと劇場も劇団も「シアター」で、そういうパターンがもともと多かったらしいですね。今は状況が少し変わってきてるらしいですけど。日本でも「座」って言ってた頃はそうだった。創作者と場が一体のものとしてあるんだという、我々演劇をつくる側としては、演劇の本来的な状況をつくりたいという思いが、もともとあったんですよ。

-それはさきほどの「貸し館をしない」ということ、すべてを主催事業にする
ことともやはり重なりますか。

中島 そうですね。なかなか思うようにはいかないんですけど、僕がここで活動を始めるときに思い描いていた絵というのは、我々が芸術団体としてここでつくるお芝居があって、それに対して共感してくれるお客さんがいて、そのお客さんに、こういう面白い作品もあるんですよと紹介する場としても機能させていきたいということでした。
 僕はよくレストランにたとえるんです。レストランというのはもちろん料理が一番大事なんだけど、料理がありつつ、その空間がありつつ、接客がありつつ、ということで、どれだけ内的体験も含めた非日常体験を与えられるかということ。それがレストランだとすると、基本的には僕はシェフとしているんだけれど、たまには別のシェフもいて、つまり、これいいですよといろいろな作品を呼んできて見せることで、お客さんにそれも食べてもらいたいなという気持ちも、もともとあったんですよ。

-位置づけとしては、鳥の劇場は「公共劇場」ということになるんでしょうか。

中島 「公立か民間」かというと、民間です。何が「公共」劇場かという議論はあるんですよね。公共の場としての劇場とはどういう場所かという議論になると、鳥の劇場は「公共の劇場」でありたいと思っています。

-お話を伺うかぎりでは、中島さんの個人的(パーソナル)な活動の延長として鳥の劇場が生まれたのだと思いますが、しかし外から見ていると、鳥の劇場の活動は、かなり公共的(パブリック)なものになっているように見えます。つまり、組織の成立過程がどうであれ、広義の意味での「公共」でありたいという意識が中島さんの中にあるということですね。

中島 当然そうですね。

||| 町全体をフェスティバル空間に

-最初におっしゃられたように「劇場が、社会や地域にとって必要である」というロジックを考えられているとは思いますが、とはいえロジックだけではなく、地域とのかかわりの中で活動されてきていると思うんですね。それは例えば具体的にはどんなことでしょうか。

中島 それを話すのはちょっと難しいところがある。じゃあ、学校をどれだけ訪れてますかとか、地域振興とかかわってこんなことをしてますっていう話に、現れとしてはなるんです。そこのところで、地域とのかかわりで何をしてますかと言われると、アウトリーチの話ばかりをしなければならないような感じになりますよね。
 こういう小さいコミュニティでは、演劇好きのためだけのラインナップを揃えても、例えばフェスティバル/トーキョーみたいなことを鳥取でやっても、反応してくれる人は少ないわけですね。だから演劇祭の中でも、海外ものも含めて作品を呼んでくるんだけど、そういうことにプラスしてほかのこともやる。例えば、クリエイティブシティみたいなことを一緒に考えましょうとか、鳥取でクリエイティブな活動をしている異分野の人の話を聞きましょうとか。
 それと、第1回目からやってるんですけど、「とっとり体験」といって、鳥取のいろんな魅力に触れてみましょうというもの。山に登ったり、人から話を聞いたり、日本酒を飲んだりね。僕の中では、「人に触れて驚く」ということはひとつの演劇的体験だ、ということにしているんですよ、若干強引ですけど(笑)。我々はテキスト情報や、画像情報で、世界中のものに瞬時に触れることができるんですが、やっぱり生に人に会うとか、味わうとか、歩いてみるとか、身体的な体験や感動は少なくなってきてるところがあるから、そういうのを鳥取について体験してもらう。
 午前中にこれをやって、午後は演劇を見て、丸一日、演劇祭というフレームの中で楽しんでもらおう、それも地域とのかかわりということなんですよ。あとは、子ども向けにワークショップを、演劇に限らず詩、美術、音楽などいろいろやったりね。

-つまり活動は狭義の「演劇」に限らないんですね。

中島 そうです。アートセンターみたいなものを持ちたいと、僕は思っている。体験ができる場ということでね。鳥取には、柳宗悦の民藝の伝統があって、非常に面白いものがありますから、そういう民藝の器などを劇場の中でセレクトショップで売ったりとか。あるいは、町中全部を使って、紙芝居や読み聞かせのようなことをやる。やっていらっしゃる方もけっこう多いので、そういう一般の方たちに集まってもらって、町中の8、9か所でやり、町歩きと組み合わせて楽しんでもらう。

-こちらの劇場に限らず、周辺の地域も巻き込んで、ということですね。

中島 そうです。町全体をひとつのフェスティバル空間としてとらえて、町中の、お客さんが歩いて行ける範囲に3つ劇場を仮設して、うちの2劇場と合わせて5会場を、見ては次へ行き、見ては次へ行きみたいにしてもらいましょうと。教育とのかかわりとしては、それ以外にも、鳥取県教育委員会からの依頼で、学校に行ってワークショップをやったりもします。また、今度初めてなんですけど、少年院へも行きます。

-近くにあるんですか。

中島 鳥取県西部の米子の方に美保学園というのがあるんです。法務省の管轄で、日常的に触れ合えるものじゃないんですが、そこの園長が訪ねて来てくれて、何かやりましょうという話になりました。

-それは劇団の「鳥の劇場」として行くんですね。

中島 そうですね。劇団に依頼があってということですね。

-なるほど。そういう意味では「鳥の劇場」は、劇場としての拠点をもって地域に根を張りつつ、劇団としては移動もできる媒体として、周辺の町なり、鳥取なり、韓国なりで活動を展開されているということなんですね。劇団としては、去年のBeSeTo演劇祭で、東京のこまばアゴラ劇場にもいらっしゃいましたね。

中島 ええ。ワンダーランドでも、その時の「白雪姫」の劇評を、芦沢みどりさんという方が書いてくださいました。

-鳥の劇場が、町や周囲に、どの程度、どんなふうに浸透しているのかにも、興味が湧きます。タクシーの運転手さんに「知ってますよ」と言われたり、演劇祭にも、私たちみたいに東京から来る人もいるけど、鳥取の方で、そんなにコアな演劇ファンではないけど、ちょっと行ってみようかなっていう人もいらしてますよね。そして、町の方がボランティアになられたりと、そういう意味では、かなりつながりができてるんでしょうか。

中島 おそらく、他の地域と比較するとできてるんじゃないかと思います。ただ、もっともっと僕はつくりたいんですよね。文化環境が違うので、単純によそと比較はできませんが、うちなんかだと、年間の延べ入場者数が1万人くらいなんです。アウトリーチで学校に行くのなんかを含めるともうちょっと多くなるんですけど。で、うーん、少ないなと思うんですよね。これをどうやって増やしていくかな、っていうのが頭が痛いところなんですね。

-HPに「ふたつの1000のお願い」と書かれてますね。サポーター1000口、1公演あたりの観客数1000人という具体的な数値目標。現状の倍増を目指す感じでしょうか。

中島 今、うちで1週間ほど公演すると、お客さんは実質600~700人程度なんですね。そのくらいは来てくれるんですけど、まあ、分かりやすい数字として1000人くらいは常時達成できるようにしたいと思いつつ、なかなかそこが届かない。

-鳥取県内部では、鳥取市や米子市に人口は集中していると思うんですが、こちらの劇場は鳥取市からも、距離的にはそれなりに離れてはいると思います。とはいえ鳥取大学も近くにありますし、米子の先には、すぐお隣の島根県松江市もありますが、そういった各都市に働きかける具体的な方策は何かあるんでしょうか。

中島 一番有効だろうと思ってやっているのは、チラシを丁寧にまくとかポスターを貼るとかいうことですね。来てくれて住所を残してくれた人に案内をするとか、メールを送るとかいうことをするのは、もちろんのことなんですけど。一般の人はやっぱり、チラシやポスター、新聞に記事として載る、というようなことが大きいんですかね。

-地域に対するアピールという点では、もちろん何かを具体的にやっていることが大前提として重要でしょうけど、「あそこはどうやらいつもいろいろやってるな感」みたいなことも、存在感としては大きい気がします。その点、鳥の演劇祭は、ボリュームがすごくある。しかも、演劇だけじゃない。量的なことだけでも、面白いぞと思ってくれる人がいると思います。演劇祭にかぎらず、実に精力的に活動をされている印象がありますが、プログラムを決めたりするのは中島さんですか。

中島 はい、そうですね。(続く>>


「連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」 第8回」への6件のフィードバック

  1. ピンバック: 矢野靖人
  2. ピンバック: 矢野靖人
  3. ピンバック: 小暮宣雄 KOGURE Nobuo
  4. ピンバック: 藤原ちから/プルサーマル・フジコ

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