振り返る 私の2014

山田ちよ(演劇ライター、サイト「a uno a uno」)

  1. 有視界飛行組合「鞦韆(ぶらんこ)―しあわせのおとこ―」
  2. うずめ劇場「砂女」(「砂女←→砂男」より
  3. SPAC「マハーバーラタ~ナラ王の冒険~」(神奈川芸術劇場版)

ちらし21(鞦韆 山田) 11月末、横浜駅近くの相鉄本多劇場が閉館。この劇場で8月に上演された「鞦韆」は有視界飛行組合がここで1999年に初演、2001年に再演した作品。無政府主義者の大杉栄と彼を取り巻く女たちを描く。13年ぶりの復活上演を後押ししたのは“誕生の地”の閉鎖とか。キャスティングにも恵まれて練り上がっていたが、葬式で懐かしい人に再会した時のような複雑な思いが湧いた。11月の「アディオス・アミーゴス!~さらば愛しき相鉄本多劇場~」という企画で大西一郎が作・演出した短編「Sleeping Beauty」(リーディング)も惜別の念とともに、他の劇場に通ずる部分もあり、印象に残った。「砂女」は衝撃的な話をリアルに感じさせる原作の面白さをうまく表した。「マハーバーラタ」はアヴィニヨン演劇祭で演じた円形舞台を再現するため、神奈川芸術劇場ホールの舞台機構を大胆に変換した。あの大劇場の空間をどう活かすか、という課題の一つの答えを見た気がする。
a uno a uno
(年間観劇数 115本) 

前田愛実(劇評ライター、ダンス企画おやつテーブル主宰)

  • 悪魔のしるし「わが父、ジャコメッティ」(KAAT)
  • ピチェ・クランチェンダンスカンパニー 「Tam Kai」(東京都現代美術館)
  • イム・ジエ「1分の中の10年」(東京芸術劇場シアターウエスト)

ちらし22(悪魔のしるし 前田) 3つぽっちを選ぶのは至難の業、なので今その面白さを新鮮に力説したいものを選んでみた(下半期に偏りました、ベスト3ではありませんってことで)。ピチェ・クランチェンは、身近な印象の現代の身体に、タイ古典舞踊の伝統の形が生き生きとのっかっていく様子が“みるみるうちに”という感じで吸い込まれる。イム・ジエも同じく伝統舞踊の素養を持つ振付家だが、こちらはクラシック・バレエ、韓国舞踊、舞踏のダンサーが、それぞれのテクニック、身体性を参照しながら、動きを写し内在化するプロセスがありありと見えてくる仕掛け。理屈っぽいコンセプトなのに、ぐぐっと見る者の身体にうったえてきて、筋肉が呼応したくなる。「わが父、ジャコメッティ」は“芸術すること” と“親子すること”の喜び、厳しさ、理不尽さ、そしていろいろが絡み合い、実の父親を駆り出すことで、綺麗に纏められないどうしようもないリアリティを突き付けてくる。お見事でした!
(年間観劇数 80本くらい) 

吉植荘一郎(俳優)

  • 国立文楽劇場「通し狂言 菅原伝授手習鑑」(4月5日-27日、国立文楽劇場)
  • SPAC「タカセの夢」(メルラン・ニヤカム振付・演出、スパカンファン出演、8月20-21日、静岡県舞台芸術公園屋内ホール楕円堂)
  • 世田谷パブリックシアター「炎―アンサンディ」(ワジディ・ムアワッド作、上村聡史演出、9月28日-10月15日、世田谷パブリックシアター)

チラシ23(タカセの夢 吉植)「菅原伝授手習鑑」は今年一番記憶に残った舞台(文楽)。パワーこそ落ちたかもしれないが、竹本住大夫の繊細な語りに触れられたのは幸いでした。桜丸切腹の場での、父と嫁の哀切きわまりないやり取りは忘れられません。なお、これを選んだ理由は、劇団ク・ナウカ時代、主宰の宮城聰(現SPAC芸術総監督)が住大夫さんの舞台を見て語りのお手本にするよう俳優に強く勧めていたからです。とても真似できるものではありませんでしたが、現代演劇の俳優にとっても貴重なお手本でした。「タカセの夢」は公募された静岡県内の中高生で構成される「スパカンファン」に、カメルーン出身のダンサー・ニヤカムが振り付けて2010年から上演されてきた作品のラスト公演。アフリカでのツアーを終えてきた子供らは既に「私の知っている君たち」ではなく、その成長ぶりが頼もしくもあり淋しくもあり。自分の人生を振り返らされる稀有な作品にも幕。「炎 アンサンディ」はムアワッドの戯曲の怒濤の迫力に感嘆するのみ。
(年間観劇数 40本)

三橋 曉(コラムニスト)

  1. 日本の30代「十二夜」@下北沢駅前劇場
  2. PANDA JOCKEYproduce 「不謹慎な家」@シアター711
  3. パラドックス定数「昭和レストレイション」@三鷹市芸術文化センター星のホール
    次点.ハイバイ「霊感少女ヒドミ」@アトリエヘリコプター

チラシ24(十二夜 三橋) 順位ではなく、観た順です(次点も含めて)。1は、舞台上の迸るエネルギーに、思わずたじろぎました。役者たちの溌剌とした芝居と平岩紙のリーダーシップに脱帽。2は、高い温度で燻ぶり続ける劇作家・櫻井智也の真骨頂。会話劇の密度の高さで、心をぐいと舞台に引き寄せられた心地に。3は、今の日本人すべてが観るべき舞台。戦争とは? そして死とは? 次点は、ミシェル・ゴンドリーも真っ青のプロジェクションマッピングに大感動。エピローグのモノローグにも泣いた。
 以上の他に、マームとジプシー「∧∧∧ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと―」@東京芸術劇場シアターイースト、劇団青年座「あゆみ」@青年座劇場、山の手事情社「にごりえ」@日暮里d-倉庫、ジョンソン&ジャクソン「窓に映るエレジー」@CBGKシブゲキ!!、城山羊の会「トロワグロ」@ザ・スズナリ、万能グローブガラパゴスダイナモス「ボスがイエスマン」@王子小劇場にも大いに痺れました。
(年間観劇数 100本前後) 

高崎大志(地域演劇プロデューサー)

  • 劇団go to「タンバリン」(脚本・演出:後藤香)
  • 劇団HallBrothers「となりの田中さん」(脚本・演出:幸田真洋)
  • Doosan Art Center+東京デスロック+第12言語演劇スタジオ「가모메 カルメギ」

チラシ25(タンバリン 高崎) 福岡は地元劇団のいい公演に出会えた一年でした。福岡と釜山との交流企画が集中したのも特徴といえます。
「カルメギ」は圧倒的な迫力と完成度、作品の含蓄に感銘を受けました。原作のかもめを日本と韓国に置き換えたストーリーも素晴らしかったです。「その河をこえて、五月」とも対照的でした。
「タンバリン」「となりの田中さん」の福岡二作品はいずれも九州戯曲賞の大賞作品です。一方は釜山公演、一方はロングラン公演をおこない話題となりました。
「となりの田中さん」は、4戸のアパートの住人がすべて田中さんという状況を生かし、人間の内面をほのみせるウェルメイドな作品でした。
「タンバリン」は、何者にもなれてないアラフォー女性や、ボクシングをはじめる独身高齢女性を中心にしたストーリーです。強く生きていこうとする女性達に安易な承認を与えるわけでも、冷たく突き放すわけでもない視点に奥深さを感じました。
PINstage高崎大志の『さくてきブログ2』
(年間観劇数 50本) 

堤 広志(舞台評論家)

  1. 泥棒対策ライト「うん」/「ドラマティック横丁」
  2. 「フエルサ ブルータ」
  3. PARCO「SINGIN’ IN THE RAIN 雨に唄えば」

チラシ26(うん 堤)「継続は力なり」を感じた年。弘前劇場時代から評価してきた畑澤聖悟の活躍、劇作開始以来の成長ぶりが頼もしかった桑原裕子、前身劇団旗揚げ以来の理想形と思ったFUKAIPRODUCE羽衣、初演劇作「日の丸ノート」で予感した才能が今に繋がる矢内原美那、ク・ナウカ結成以来の取組がアヴィニヨンへ至ったSPAC「マハーバーラタ」。どれも一朝一夕でなく、才能や活動を見守ってきた甲斐もあったと感慨深い。地点、チェルフィッチュ、東京デスロック、Port B、Noism、コンドルズ、イデビアン・クルー、クリウィムバアニー、山田うん、BATIK、伊藤郁女、白神ももこら皆やるべき表現に挑んでいる。ハイバイ、サンプル、チャリT企画、アマヤドリ、Dull-Colored Popの佳作もあった。1年で20作近く公演した勅使川原三郎、ポーランド“沈黙する身体”ステファン・ニジャウコフスキ、今目が離せない要注意人物・川村美紀子に驚いた。
(年間観劇数 274本) 

柴田隆子(演劇研究者)

  • She She Pop「春の祭典―She She Popとその母親たちによる」@京都府立府民ホール“アルティ”
  • 悪魔のしるし「わが父、ジャコメッティ」@KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
  • 川村美紀子「蝶と花」

チラシ27(春の祭典 柴田) 今年は同じ作品を複数回観たいと感じることが多かった。その理由の一つには、舞台で語られるテクスト内容が興味深く、かつきちんと言葉として伝わってきたからではないかと思う。She She Popと悪魔のしるしは限られた公演回数や制約のあるスケジュールの中、望み通り複数回観ることができ、かつ回を重ねることでさらに楽しむことができた作品である。他にも、冨士山アネット/Manos.「醜い男」(東京芸術劇場アトリエイースト)、I.N.S.N企画「カスパーホイザーメア」(赤坂エノキザカスタジオ)、うずめ劇場「砂女」(ザ・スズナリ)、「ザ・モニュメント」(プロト・シアター)などの「言葉」は、テクストベースの面白さを更に舞台が増幅していて印象深かった。3つ目の川村の作品は身体の動きが言葉で語る内容と微妙にずれていく様に新しいものを感じた。国内では未見のチェルフィッチュ「スーパープレミアムソフトWバニラリッチ」も同様の面白さが記憶に残る。
(年間観劇数 62本)

福田夏樹(演劇ウォッチャー)

  1. 板橋駿谷一人芝居「俺の歴史」
  2. KJプランニングス「ザ・モニュメント 記念碑」
  3. 味わい堂々「運命の女」

チラシ28(俺の歴史 福田) これまでは、「毎年お前はまりすぎだろ」っていうぐらい感動してしまう芝居が3本ぐらいはあったのですが、齢30を境にした不感症なのか、忙しすぎた仕事のせいなのか、そこまで入り込めなかった気がしています(上演される作品のレベルが低かったとかではなく)。そんな中、公演後もじわじわと心に残った、同じ30歳の方が生きざまを示した3本をあげました。2、3は積極的に公演前から推薦をしていた作品ではありますが、本心です(自分の選球眼をほめたい)。なお、誰も求めていないかもしれませんが、今年愛しくてたまらなかった役者のパフォーマンス3つをあげると、青年団リンク玉田企画「少年期の脳みそ」の井上みなみさん、ワワフラミンゴ「映画」の多賀麻美さん、酒井幸菜×藤田貴大「Layer/Angle/Composition」の吉田聡子さんでした。
(年間観劇本数 ちゃんと数えてないですが200本ぐらい) 

齋籐理一郎(会社員、個人ブログ「RClub Annex」)

  • 月刊「根本宗子」「夢も希望もなく。」
  • アマヤドリ「ぬれぎぬ」
  • 劇団青年座「台所の女たちへ」

チラシ29(夢も希望もなく。 齋藤) 時間を忘れて見入ってしまう舞台が多かった気がする。そのなかでも特に惹き込まれた3作品を。「夢も希望もなく。」は最後に重なる二つの時間の交わりの立体感に深く浸されたし、「ぬれぎぬ」には同じ舞台であっても良い意味での舞台との一期一会感があってパスポート券で予定回数以上に足を運んでしまった。「台所の女たちへ」は戯曲・演出の秀逸さに更なる肌触りを与える老舗劇団の底力を感じた。
 澁谷桂一(めのん!)や鳥皮ささみ(なかないで、毒きのこちゃん)等、これまでの演劇の枠組みの中でも新たな語り口の洗練をもった若い作り手たちを知り、あるいはそれらの作品に触れることができたのも収穫のひとつ。彼らの来年以降の作品もとても楽しみ。
もちろん、既知の作り手たちの様々な進化も数多く目の当たりにした。砂の上の企画「水分-みくまり」、鳥公園「緑子の部屋」、カトリ企画「紙風船文様」(鎌田順也演出)、Ank「ヘナレイデー」、F/T「春の祭典」、Hula-Hooper「WATAC I」など、これまでに体験したことのない感覚に導いてくれる舞台にもたくさん出会えた1年だった。
RClub Annex
(年間観劇数 300本弱) 

桜井圭介(音楽家・ダンス批評)

  • ミクニヤナイハラプロジェクト「桜の園」(にしすがも創造舎)
  • 三浦直之「ロミオとジュリエットのこどもたち」(あうるすぽっと)
  • 神村恵+大脇理智+高嶋晋一「わける手順 わすれる技術 ver.1.2」(10月4日 Ongoing)

チラシ30(桜の園 桜井)「桜の園」は、3.11(以後)(の私たち)を扱ったこれまでの演劇上演の中で最も優れたものだと思う(当然、今年観たうちのベスト)。また、矢内原美邦が約10年かけて作りあげた(走り回りながら高速で発話! という)特殊な「方法」が、このようなストレート(ベタ)な題材によってある意味「普遍性」を獲得するまでに到ったことは驚きである。
「ロミオ~」 は、「妄想力=突破力」によって「現実」に抗い、「現実」の「リアル=潜勢力」を引き出す、演劇的虚構の力(日本的サブカルの想像力であると同時に)を見せてくれた。三浦直之は唐十郎〜野田秀樹の正嫡子である。
「わける手順~」 は、ほぼ壊滅状態のコンテンポラリーダンスにあって、新たな展開の可能性を感じさせる試みだった。コンテンポラリーダンスの更新とは即ち「ダンス」そのものの概念の更新である。継続するこの作業に注目していきたい。
 そのほか今年は、捩子ぴじん、わっしょいハウス、ワワフラミンゴの活動に刮目した。
(年間観劇数 60本)

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【注】
・記憶に残る3本は「団体(個人)「演目」」を基本とし、劇作家、会場、上演日時などを追加した場合もあります。
・演目名は「」でくくりました。
・ブログやツイッターのアカウント情報などはコメント末尾に記しました。

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