振り返る 私の2014

片山幹生(大学非常勤講師、ワンダーランド編集部)

  1. 田無第四中学校演劇部「あゆみ」(柴幸男作)
  2. 新国立劇場「ご臨終」(モーリス・パニッチ作、ノゾエ征爾演出)
  3. 革命アイドル暴走ちゃん「騒音と闇 ドイツ凱旋ver.」(二階堂瞳子構成・演出)

チラシ31(あゆみ 片山) 田無第四中演劇部の「あゆみ」は東京都中学校連合演劇発表会(中学演劇の都大会に相当する)で上演された。9人の少女たちによって演じられるこの「あゆみ」は、演劇部員である彼女たちの日常からはじまり、最後にまた演劇部員の彼女たちの日常へと戻ってくる。不安定で移ろいやすい思春期前半の少女たちによって演じられることで「あゆみ」という作品の本質が鮮やかに浮かび上がった。カナダの劇作家、パニッチ作「ご臨終」は温水洋一と江波杏子による二人芝居だが、温水が上演時間の大半、語り続ける。二時間半にわたって甥が無言の叔母をひたすら毒づくというブラックでナンセンスな断片的情景が重ねられていく。しかしこの二人芝居には普遍的な人間存在のありかたについての問いを含まれていることが徐々に明らかになる。最後の場面では思いもよらなかった深い感慨で満たされた。どこか人を食った軽やかさがあるノゾエ征爾の演出の特徴が生かされた舞台だった。革命アイドル暴走ちゃん「騒音と闇 ドイツ凱旋ver.」では驚くほど多様な要素が凝縮され、それが45分の間、炸裂し続ける。そのエネルギーは圧倒的である。大音量の音楽とぎらぎらの照明、そして水しぶき、わかめ、豆腐、服などの飛来物に、空間は狂騒状態になるのだけれど、その狂騒は緻密に制御・構成されていた。
(年間観劇数 約100本) 

萩原雄太(演出家・かもめマシーン主宰)

  1. 水止舞(東京都大田区)
  2. 甘酒こぼし(埼玉県秩父市)
  3. 鮫洲八幡神社深夜神輿(東京都品川区)

萩原さん 水止舞 今年の中盤くらいからほぼ毎週のように民俗芸能を見に行くようになってしまった。もちろん、現代演劇やダンスでいくつかの素晴らしい作品に出会ったけど、折角なので、民俗芸能に限定して3本を挙げた。1は、簀巻きにされた男性に水をかける儀式で、わけのわからなさに頭がクラクラした。2は甘酒をかけ合う祭りで、快楽を突き詰めた末の乱痴気騒ぎ。3は鮫洲の住宅街で午前3時から行われる祭り。神輿が直線的に進まず、押し合いへし合いしながら進んでいく姿が、共同体の似姿に見えた。
 民俗芸能というと、伝統の枠に守られた「死んだ」芸能というイメージが先行するが、仔細に観察すると、共同体が背負った時間、事件、歴史などの痕跡が見えてくる。それを解きほぐすと、コンテンポラリーであると同時に1000年も前の人々とつながって存在しているということが感じられるのだ。そんな、舞台芸術が捨ててきたものについて、民俗芸能に接しながら考えている。
(年間観劇数 民俗芸能、劇場公演合わせて40本程度) 
編集部注:写真は厳正寺水止舞。提供=水止舞保存協力会

高野しのぶ(現代演劇ウォッチャー/「しのぶの演劇レビュー」主宰)

  • Kawai Project「『から騒ぎ』Much Ado About Nothing」
  • Dance New Air 2014―ダンスの明日「TWERK ダンス・イン・クラブナイト」
  • Doosan Art Center+東京デスロック+第12言語演劇スタジオ「가모메 カルメギ」

チラシ33(から騒ぎ 高野) 衆議院議院選挙で自民・公明両党が過半数を獲得した夜にこの原稿を書いている。私のようなごく平凡な人間でさえ、インターネット上に自由な観劇感想文を発表しづらくなるのではという恐怖にかられる。
 英文学者・翻訳家の河合祥一郎氏がシェイクスピア戯曲を翻訳、演出したKawai Projectは、キャストの大半が新国立劇場演劇研修所の修了生。みずみずしい演技でセリフを生きた言葉にして伝え、海外古典劇を現代日本人が本気で笑えるコメディーに仕上げていた。形式ばった演技の沙翁劇が幅を利かす演劇界において画期的な成果と言える。「TWERK ダンス・イン・クラブナイト」は上には上があると見せつけてくれたコンテンポラリー・ダンス作品。本物のプロが全てをさらして究極のバカをやるお手本だった。昨年の私的小劇場ベスト3だったソン・ギウン脚本・演出協力、多田淳之介演出の「가모메 カルメギ」が日本初上陸。国際共同製作のひとつの理想を実現してみせた。
 ドタバタ喜劇でホットな時事問題に正面から切り込む、京都の劇団「笑の内閣」の芝居を2作観た。作・演出の高間響氏の今後に期待する。
(注)3作品の並びは上演順。客席数300席以下の小劇場公演から選出。再演を除く。
しのぶの演劇レビュー
(年間観劇数は190本の予定(2014/12/15時点)) 

河原その子(舞台演出家/Crossing Jamaica Avenue 代表)

  • バジル・ツイスト「春の祭典」Lincoln Center Theater Rose Hall
  • 中馬芳子とスクール・オブ・ハードノックス「π = 3.14… HOW TO DELIVER AN AFGHAN HAT, Endless Peripheral Border Cont… 」La MaMa E.T.C. First Floor Theater
  • ブロードウエーミュージカル「ライオンキング」New Amsterdam Theater

 流山児★事務所さんはじめ日本の舞台の方に多くお会いし、勉強する機会に恵まれました。観劇数は少ないですが、アーティストの紹介も含め心に残ったことです。
 人形師バジル・ツイストの「春の祭典」は、めくるめく絹布の振り落としだけでストラビンスキーの世界を表現。人形師の範疇をこえた、でも人形師だからこそ作り得た舞台 。日本で観てもらえないのが悔しい。87本のバトン設備がないと上演できないのだ。
 振付家中馬芳子さんの「π = 3.14… 」は、戦争のやりきれなさを傍観者で済ませてはいけないと訴える。ダンス、映像、音楽、インタビューの断片が、舞台を被う白い布が剥がされる下から湧き出てくる。混沌の中、ボゴダ地方のスープの作り方を述べる声が心に響いた。
 初演を観て以来、15年振りの「ライオンキング」。前衛演出家ジュリー・テイモアと商業ミュージカルが組んだ事で画期的だった、衝撃のオープニングは健在で、涙が出た。残念なのは、ターザンロープのひと揺れで一瞬で子どもシンバが大人になるところや、フォーメンションでドラマチックな心情をみせる場面など、シンプルかつ、マジカルな部分が形骸化していたこと。時間を経て残るもの、(残って欲しいが)残らないものを感じた。 

小泉うめ(観劇人、会社員)

  1. ピッコロ劇団オフシアター「車窓から、世界の」
  2. 鳥公園 ショーイング公演「空白の色はなにいろか?」
  3. カストリ社「花田一郎の述懐」

ちらし35(劇作家大会 小泉) 今年は9年ぶりに豊岡で開催された日本劇作家大会が忘れ難い。関西ゆかりの劇作家の合作「日めくり半七物語」、赤澤ムック「万華鏡三景」など当地ならではの作品が印象的だった。また昨年の回顧で名前を挙げた西史夏が「こうのとり短編戯曲賞」を受賞し、続いて「せんだい短編戯曲賞大賞」を受賞したことにも手をたたいた。
 それら以外に、これからも継続して注目したい団体・個人の3作品を選んだ。
1.iakuの横山拓也は「人の気も知らないで」のツアー上演、MITAKA”Next”Selectionで「流れんな」を再演したが、ピッコロ劇団とのジョイントによる本作は特に到達度が高かった。
2.鳥公園が関西に通ってくれるようになったことも嬉しい。今回は会場の活かし方も見事だったが、そういうことも西尾佳織の能力とそれを認めた現地との良好な関係があってのことだろう。
3.大阪テン年代の旗手・匿名劇壇の福谷圭祐と、がっかりアバターの坂本アンディの合同公演にして解散公演。いずれ関東にもお目見えするであろう彼らの名前は是非覚えておいて欲しい。
@co_ism1_U_Me
(年間観劇数 230本)

北野雅弘(群馬県立女子大学教員)

  1. 維新派「透視図」
  2. ピーター・ブルック「驚愕の谷」
  3. ミクニヤナイハラプロジェクト「桜の園」

チラシ36(驚愕の谷 北野) 今年は(も)あまり観劇が出来なかった。数少ない鑑賞経験の中で印象に残ったものを挙げると、まず、大阪という都市とその変化を主人公にした維新派の「透視図」。主宰の松本雄吉はより正統的な演劇の演出にも乗り出しているが、「十九歳のジェイコブ」と比べても、やはり本拠の維新派は屋台村も含めて時間が濃密だ。時代も場所も個人的にとても近しい大阪が描かれていて感涙。第二に、「ザ・マン・フー」の続篇的な作品であの衝撃にはほど遠いが、日本ではなかなか望めないレベルの上演だったブルックの「驚愕の谷」。キャサリン・ハンターの自在さとも相まって共感覚や視覚的記憶の世界を垣間見せてくれる。最近のブルックは同工異曲には感じるのだけれど。最後に、動きや台詞の中途半端さを含め、私たちにとって等身大のフィジカル・シアターってこんな所にあるのかな、と考えさせる舞台だったミクニヤナイハラプロジェクトの「桜の園」。
(年間観劇数 約20本) 

危口統之(悪魔のしるし主宰)

  1.  Core of Bells「怪物さんと退屈くんの12ヶ月」
  2. 三条会「三条会のゼチュアンのぜんにん(善人)」
  3. クリストフ・シュリンゲンジーフ「痛いところを突く」

チラシ37(12ヵ月 危口) 1. ひとつひとつの公演を基準にして「記憶に残る三本」を挙げると、今年のあいだ彼らが月イチペースで発表してきた12の作品群から三つお気に入りを選んで終了となりかねないのでひとまず企画全体の総称を紹介するにとどめておく。コンセプトに殉じる姿勢に勇気付けられた。2. まばゆいばかりの白々しさ。臆面のなさ。あまりにも上品すぎるので少し不安になった。3. 昨今話題の「地域系アート」を考える上で非常に示唆的。国を呪う前に考えねばならないこと、試す価値のあることはまだ沢山ある。その他、たいへん楽しかった鑑賞体験として郷里のスーパー銭湯で観た「南條隆とスーパー兄弟」を追記しておく。
(年間観劇数 約20本) 

仲野マリ(フリーランスライター、ブログ「ガムザッティの感動おすそわけ」)

  1. さいたまネクスト・シアター「2014年・蒼白の少年少女たちによる「カリギュラ」」(さいたま芸術劇場インサイドシアター)
  2. 世田谷パブリックシアター「炎 アンサンディ」(世田谷シアタートラム)
  3. KAAT竹本駒之助公演『恨鮫鞘』「無筆書置の段」(神奈川芸術劇場)

チラシ38(カリギュラ 仲野)「カリギュラ」は、カミュの難解な哲学を若手俳優たちが「他人事」ではなく「自分のこと」として反芻し美しい科白を心に伝えた珠玉の舞台。殺人と戦争の違い、「自由」とは何かなど、国の安泰と個人の幸福との対比が浮かび上がる。政権を握った者の思い込みの愚かさ危険さ、政治的無関心と官僚の責任逃れの罪深さを現代の日本人に突きつけた。
「炎 アンサンディ」は、パレスティナ人が中東の現状を描いた作品。重いテーマでありながら3時間を長いと感じさせない。特に少女から老女まで一生を演じた麻実れいと、一人で6役もこなし、そのすべてに印象を強く残した岡本健一の人物造形に拍手。
 女義太夫の人間国宝・竹本駒之助の素浄瑠璃を聞き、観客の想像力に訴えかける「語り」が言葉の芸術の源であると再認識した。KAATは白井晃氏が芸術監督に就任以来、ホール、スタジオとも挑戦的・発展的な上演が続き、未知のものと出会える予感で同劇場に通うのが楽しい。

ガムザッティの感動おすそわけ
@GamzattiCom
(年間観劇数 114本) 

玉山悟(王子小劇場代表)

  1.  ONEOR8「世界は嘘で出来ている」
  2. らぶ・まん「父と乳」
  3. 九十九ジャンクション「本間さんはころばない」

チラシ39(世界は嘘で出来ている 玉山)1 .セリフも人物造形も物語も俳優も演劇的な企みもなにもかも素晴らしい。
2 .ぶっとんだセンスが愛しくてたまらない。
3. 20年来の土屋ファンですのでひさしぶりの新作楽しみました。
(年間観劇数 100本から200本の間) 

大泉尚子(ワンダーランド)

  • Produce lab 89「官能教育 糸井幸之介×「安寿と厨子王」」(a)
  • ワワフラミンゴ「映画」「ホーン」(b)
  • さいたまゴールド・シアター「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」(a)
    (順不同)

チラシ40(ホーン 大泉)「安寿と厨子王」の憎ったらしいほどのエロさ、ワワフラのヒモ付きでない笑い、「鴉よ」の卓越した造形力を堪能した。このほかカトリ企画「紙風船文様」第5回(鎌田順也演出)(a)、鵺的「毒婦二景Aプロ 定や、定」(a)、劇団しようよ「パフ」(b)、SPAC「マハーバーラタ」(a)、東葛スポーツ「クラッシュ」(b)、演劇クエスト「本牧ブルース編」(b)など。
 今年も緊密な劇的空間を構成し、しかも紛れもない“今”の息吹を感じさせる舞台に出会えた。思わず息を呑み、心の底から舌を巻き、膝を打ってしまうそれらを(a)の高揚タイプとすると、一方で何物をも強いることのない揺れるような漂うような、奇妙な心地よさを提供してくれた作品が(b)の解放タイプ(そういえばクスリにもアップ系とダウン系があるそうな…)。そこには小劇場演劇にある時はつきものだった、狭い空間に鼻面を突き合わせてそれ見ろやれ見ろ、挙句の果ては参加しろ的な束縛感など微塵もなく、既成の枷からするりと逃れ出ている。そのうち、解き放たれた観客である私も風に乗ってどこかに吹き飛ばされてしまうのかもしれない。
(年間観劇数 約100本)

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【注】
・記憶に残る3本は「団体(個人)「演目」」を基本とし、劇作家、会場、上演日時などを追加した場合もあります。
・演目名は「」でくくりました。
・ブログやツイッターのアカウント情報などはコメント末尾に記しました。

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