振り返る 私の2014

山内哲夫(編集者、100字レヴュー)

  • チェルフィッチュ「スーパープレミアムソフトWバニラリッチ」
  • マームとジプシー「∧∧∧ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと――――」
  • THE SHAMPOO HAT「風の吹く夢」

チラシ41(チェルフィッチュ 山内) 3作品に絞ってみると、実力者の底力を見せつけた1年ともいえそう。特に、コンビニ題材にデフォルメされた振り付けとシニカルな笑いでチェルフィッチュの岡田利規が貫禄。マームの藤田貴大も岸田賞受賞の旧作再構成が大成功。ただ、遊眠社作品挑戦は成功せず安定感ありとはいえず。赤堀雅秋も受賞後1作目は暴走気味だったものの劇団最終公演の覚悟で臨んだ新作は土木作業員たちの日常が抜群の臨場感。男の情けなさに哀感。ほかに、「財団、江本純子」「人生2ねんせい」も素晴らしく時間軸の動かし方も見事で岸田賞最有力か。ワワフラ安定で「ホーン」素晴らしく、不発続いた東葛スポーツも「クラッシュ」は本領発揮。出演者全員によるラストのフリースタイル合戦に興奮した。柴幸男では「わたしの星」は見事な成果。根本宗子の成長も顕著で次は岸田賞候補に入ってきそう。水素74%、PPPP!、あひるなんちゃら、範宙遊泳などの仕事もよく印象的だった。
(年間観劇数 65本) 

チンツィア・コデン(イタリア語講師・演劇研究)

  1. オルガンヴィトーVol.28 「黄金バット」
  2. 鵺的「毒婦二景」Aプロ「定や、定」
  3. 田村泰二郎「とんぼうお『神山貞次郎への追悼を込めて…』」

チラシ42(黄金バット コデン)1.長年眠っていた戯曲が、三軒茶屋にある太子堂八幡神社境内のブルーシートでできた特設舞台で上演された。不二稿京演出で、劇作家唐十郎の言葉が面白く肉体化され、デリケートな登場人物たちの世界に引きずりこまれた。
2.高木登作・演出、下北沢の小劇場楽園にて。二人芝居はこぢんまりとしているが、阿部定(岡田アガサ)と女衒(寺十吾)の対話から、定の生涯の背景にある社会や歴史が垣間見えて、芝居が広がりを見せている。
3.この作品では、田村泰二郎のソロ舞踏「Kの昇天」が儀式としての演劇を感じさせた。中野テルプシコールは長い花道を挟んで二つの空間に分けられた。その客席にいた私は、神秘的で原始的なエロスをたたえた身体から目を離せなかった。
 ほかに刺激を受けた舞台はARICA、解体社。また世田谷パブリックシアターの現代能楽集VII「花子について」の狂言「花子」、三島由紀夫「近代能楽集『班女』」の倉持裕作・演出、別役実作・ケラリーノ・サンドロビッチ演出「夕空はれて~よくかきくうきゃく~」なども興味深かった。劇場から離れて、四谷シモンと安保由夫やヒグチケイコのライブが劇的だった。「桜の森の満開の下で」「羊の住処~唖女より~」「私たちのイヴたち 蝕」を観劇し岸田理生の作品をもっと見たいと思った。見られるのは限られた本数で、関心があっても逃してしまった演劇は多い。ところで2014年を振り返ろうとすると、2013年の作品の方が記憶に残っていることに気付いて違和感を覚えてしまう。
(年間観劇数 70本) 

文月路実(編集者・ライター、個人ブログ「この世界は私の生きていたい世界ではない」)

  1.  ベッド&メイキングス「野外劇 南の島に雪が降る」
  2. アル☆カンパニー「失望のむこうがわ」
  3. FUKAIPRODUCE羽衣「よるべナイター」

チラシ43(南の島 文月)1.お台場の公園でのテント芝居。劇中劇で、戦場で芝居をやっている演芸団の兵士たちの物語と、彼らの演じる芝居を描く。戦場の地獄を生きる兵士たちが求めた『フィクション』と、お台場の公園で演じられる『フィクション』が交錯。テント劇場を出ると、海の向こうに美しい夜景が広がっており、芝居が終われば解体されてしまうテントの儚さ、いつかは終わってしまうフィクションの儚さに胸が締め付けられる。しかしだからこそフィクションは美しく、強いのだと思った。
2.三浦大輔の2年半ぶりの新作。顔の筋肉、声の色、身にまとう空気、すべてを使って感情を表現する平田満に瞠目。台詞の間も些細な表情の動きもすべて計算され演出されているはずなのに、それをまったく感じさせない。スリリングで目が離せず、無限に想像力が広がる。
3.男女劣情や都会に生きる寄る辺ない大人たちを描く。切実な歌詞を、俳優たちは明るく踊りながら歌い上げる。愛と孤独、生と死。人生いいことばかりじゃないけど、やっぱりそこにはたくさんの輝きがある。
この世界は私の生きていたい世界ではない
(年間観劇数 110本) 

ウルリケ・クラウトハイム(舞台芸術コーディネーター)

【Todo el cielo sobre la tierra公演より】
【Todo el cielo sobre la tierra公演より】

 今年の圧倒的な1本。上演時間3時間を超える大作。主人公のウェンディは戯曲「ピーター・パン」の登場人物に由来。ピーターに、いつまでも大人にならない島「ネバーランド」に連れて行かれたウェンディは永遠の若さ、美しさと潔白を求めるよう運命づけられている。
 作品の前半は不思議な人物が登場する島の風景。後半は2時間弱続くAngelica Liddell一人のモノローグ/ヴォイス・パフォーマンス.。2時間近く自分の怒り、憎しみ、寂しさ、悲しさを叫びだす。この女性は、体力と精神力の限界に挑戦している。圧倒的な存在感を持つ身体的パフォーマンスと現代病である「うつ」状態を鋭く、緻密に描くテキスト。この、様々なタブーや葛藤に触れる過激的な作品に感銘をうけた。このような女性の怒りをテーマとする作品は日本で全く見られない気がする。日本の女性はいつまでも可愛くないとダメみたい。現在の日本社会、怒るべきトピックが少なくないと思うが。
(年間観劇数 約60本) 

廣澤梓(会社員、ワンダーランド編集部)

  • 悪魔のしるし「搬入プロジェクト #15」
  • 「フェスティバルFUKUSHIMA!@池袋西口公園」
  • 地点「桜の園」

 まずはフェスティバル内の開催という点で、共通している2本を。六本木アートナイトの「搬入プロジェクト」では、まるで搬入されない巨大な物体を多くの「アート・パーティピープル」とともに深夜何時間も見つめた。F/T14オープニング「フェスティバルFUKUSHIMA!」ではこどもをだっこし、両手が塞がったままの若いお父さんお母さんの魅力的な「盆踊り」を、私も踊りながら味わった。
観客のひとりでありながら、ほかの観客を鑑賞する演劇(?)の一方、劇場制度を射程に地点が運営するアトリエ「アンダースロー」で見た「桜の園」は、2007年の初演を見ていることもあり、訓練された役者、変わらない物語を見つめる良さをあらためて感じさせられた。六本木スーパーデラックスでのcore of bells月例企画「怪物さんと退屈くんの12ヵ月」は、実際に観劇できた回数が少なく3本からは外したが、降霊術をテーマに毎月異なる作品がたった1回だけ行われることに高揚感があり、さらに毎回劇評が用意され楽しませてもらった。
(年間観劇数 47本)

都留由子(ワンダーランド)

  • モモンガ・コンプレックス ⇄ 珍しいキノコ舞踊団「Together さ。」
  • 劇団印象「匂衣」
  • さいたまゴールド・シアター「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」

チラシ46(モモコン 都留) 見た順です。「Together さ。」は、ダンサーのみなさんがとても楽しそうで朗らかで上機嫌な気がして、見ているこちらも嬉しくなった。そして、幸せな気分になる作品・朗らかさが客席に伝染するような作品って本当にいいなあとしみ込むように思った。「匂衣」は、事前に「外国人に犬を演じさせる」ってどういうことだろう、PC的には大丈夫なのか?? と恐る恐る行ったらもちろん大丈夫で、「お別れ」というものがじんわりしみ込んでくるようだった。ガンと殴られたかと思ったのが「鴉よ~」。わたしは知らずにあの子たちを撃ち殺していたのかもしれない。わたしの掌には血が染みているのだろうか。
(年間観劇本数約60本) 

宮武葉子(会社員)

  1. いわき総合高校演劇部「あひる月13」
  2. DAZZLE「花ト囮」
  3. 東京芸術劇場×明洞芸術劇場 国際共同制作「半神」
    次点は劇団ジャブジャブサーキット「ディラックの花嫁」

ちらし47(あひる月 宮武)1.役者が舞台で本人を演じるという「嘘」にわくわくさせられると同時に、福島に関する自分の無知を実感して凹む。あと、芝居として面白かったのとは別に、今の高校生と、自分の記憶の中の高校時代とが、全く別のものであるように思えたのが衝撃的だった。世代の違いというのはこういうことなのだろうか。私が制服着てた頃はバリバリ昭和だったもんなぁ。嗚呼。
2.ダンスは門外漢なので、人間の身体はこんな風に動くんだ! と、単純に感動した。加えて振付、音楽、世界観等々、全てがツボだった…だけに、最後の決め台詞だけが残念でならない。「囮」ってそういう意味じゃないだろ…
3.何一つ理解できなかったのに、なんだかとても面白かった。観劇後に原作のマンガと戯曲を読んだが、こちらは正直、何が面白いのか分からなかった。それ以来、演劇の面白さって何なんだろうとずっと考えている。未だ答えは出ていない。(1~3は観劇順です)
(年間観劇数 115本)

カトリヒデトシ(カトリ企画主宰・プロデューサー)

  1. マームとジプシー「ΛΛΛかえりの合図、まってた食卓、そこ、きっとーーーーー」
    6/29 @だて歴史の杜カルチャーセンター大ホール
  2. OiBokkeShi「老いと演劇」 8/3 @和気商工会館3階大ホール
  3. 三条会「ひとりごけ」 8/8 @三条会アトリエ

チラシ48(マーム伊達 カトリ) やむにやまれぬものにつきうごかされている姿が見たい。その題材が、テーマが選ばれた理由なんかどうでもいい。個人的な経緯など知りたくもない。流行や風潮で取り上げられるものはまっぴらだ。どんなに極私的なことだとしてもそれを「今やらねばならない」という当人の切実さだったり、必死さだったりが伝わってくるものがみたい。それこそが永遠に「今ここ」でしかない演劇の真髄だとおもうから。それが感じられそうな作品のためにはどこにでもいく。行く意志はもっていたい。で、選んだのが3本。1は岸田賞受賞作を3年経て出身地での公演。故郷を離れること。成長して離れていくきょうだいのこと。北海道に地縁を持つものには胸に迫る。2は介護に演劇をとりいれるという意欲的とりくみ。人への、人間存在への優しさ、深い思いやりがあらわになる時間。3は代表作を一人芝居にというだけではなく、アトリエを閉めることとそこで過ごした時間が作品にリンクし、演劇を選んでしまったことへのアンビバレントな思いが露呈した。
(年間観劇数 135本(12/20現在))

伊藤昌男(座・セーヌ代表)

  1. 小池博史ブリッジプロジェクト「銀河鉄道」
  2. 世田谷パブリックシアター「現代能楽集Ⅶ花子について」
  3. 新国立劇場「十九歳のジェイコブ」

チラシ49(銀河鉄道 伊藤) 選んだ3本に共通のキーワードは「異色のコラボレーション」。
 演劇を中心として、ダンス(コンテンポラリーダンス)・能・狂言と見事な融合を図った「銀河鉄道」「花子について(葵上)」。単なるコラボではなく、それぞれの持ち味である、身体ボギャブラリーが十分発揮されての相乗効果が見事。
「十九歳のジェイコブ」は、原作、脚本、演出(者)の意外な組み合わせが、中上健次の世界観を新たな視点で構築。松井周・松本雄吉が、新たな解釈を加えて過激な精神世界を視覚化して成功した。
 日本の伝統芸能は、他にも歌舞伎や浄瑠璃など多々あり、来年は更なる「コラボ」を期待したい。
(年間観劇本数 30本~40本) 

宮本起代子(因幡屋通信/因幡屋ぶろぐ主宰)

  1. studio salt「柚木朋子の結婚」(椎名泉水作・演出)
  2. ロ字ック「媚媺る、」(山田佳奈作・演出)
  3. ミナモザ「みえない雲」(グードルン・パウゼヴァング原作 高田ゆみ子翻訳 瀬戸山美咲上演台本・演出)

チラシ51

 今年は歌舞伎や新派、新国劇(現劇団若獅子)などに収穫が多かった。また劇場のサイズではまちがいなく「小劇場」だが、公演の規模や企画のボリュームを考えると、いわゆる「小劇場公演」にカテゴライズするのがためらわれる作品もあって、本アンケートの回答は大変むずかしかった。いずれも女性劇作家・演出家の作品になったのは偶然かあるいは必然かはさておき、上記3本を挙げられたことに、ひとまずは安堵している。
 1の「柚木朋子の結婚」は劇団久しぶりの公演であり、古民家での上演や客演の女優のダブルキャストなど、さまざまな試みが誠実で好ましい成果をあげており、2の「媚媺る、」は、ほんの数年前までむき出しのままぶつけてくるように粗削りだったのが、慎重で繊細な劇世界に変容したことに驚かされた。そして3の「みえない雲」は悲嘆の極みにあってなお、人は何かを作りだそうとすること、この世における演劇の役割を改めて確認させてくれた。
因幡屋ぶろぐ
@inabaya_kiyoko

(年間観劇数105本の予定(12月23日まで)

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【注】
・記憶に残る3本は「団体(個人)「演目」」を基本とし、劇作家、会場、上演日時などを追加した場合もあります。
・演目名は「」でくくりました。
・ブログやツイッターのアカウント情報などはコメント末尾に記しました。

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