劇評を書くセミナー KYOTO EXPERIMENT 2014編 報告と課題劇評

1 contact Gonzo「xapaxnannan(ザパックス・ナンナン):私たちの未来のスポーツ」
◎芝の上ではなにが行われる(中村優子)

 西京極スタジアムで「xapaxnannan(ザパックス・ナンナン):私たちの未来のスポーツ」は上演された。

 芝の上にてスポーツのようなものが行われているのだが、どのようなルールに基づいて動いているのかは教えられない。ただある一定の条件のもとで、ある動作を強いられる、何か条件付けられ動いているということは明らかである。

 場所、服装、動きの様子、そしてタイトルに引きずられて、観る者はスポーツにパフォーマンスのレッテルを貼り、あるいはパフォーマンスにスポーツの要素を抽出し、「スポーツ」を観ることと、(予定される通り上演される)パフォーマンスを観ることの境界に立たされた。

 いわゆる競技スポーツを観る作法では、観る者は反応を強制されている。ルールは明示され、勝利の条件が示される。勝ちに近づけば歓喜し、負けに近づけば落胆しながらもプレイヤーを鼓舞する。だが、今回はそのような見方は許されていない。宙ぶらりんになったまま、ある動作が何を意味するのか、痛みは成功の報酬なのか、それとも罰なのか。観客はそれを知らないままだ。興味深いことに、スタジアムの隣の西京極野球場では野球の同立戦が行われており、スタジアム内で演奏される音楽が止まると、球場側の声援、応援歌、熱狂がスタジアムにもじわりと伝わってくるのであった。一般的なスポーツを観るときの気持ちを忘れることのできないままスタジアムに対峙せざるを得なくなる。

 スタジアムは400m9レーンの全天候型トラックと、さらにその外側まで競技場として利用されるが、芝の上の部分のみが、一定のルールに基づく行動を強いられるフィールドであった。それを如実に表す存在がカメラマンであった。カメラマンはオールウェザーの上に立ち歩き回る、その動作は条件が発動しても思いのままに動き回ることができる。自分の意志のままに隔絶された存在であり、ルールの外の者であることが示される。芝の上のみが「舞台」として設定されており、ルールの中/外の者によって明確に分かたれるのであった。

 激しく身体同士がぶつけられ、必死で走り、ぶつかった末転げまわることすらあるものの、猛々しさは感じられず、むしろ安全で快適な世界のようにすら感じられる。脅威が存在しないのである。それはなぜかといえば、ルールとルール違反の境界で切磋する姿はないからであると考えられる。一般的なスポーツにおいては、ルールを破ることは御法度である。これは裏返して考えれば、誰もがルールを破る潜在性を持っているのである。そのために「フェアプレイの精神」が叫ばれ、「スポーツマンシップ」に則りプレイすることを宣言させられる。スポーツそのものがルール破りの可能性を内包するがゆえに現存のルールの枠を順守させることを誓わせるのである。

 「あそび」においては、ルール破りこそが人の遊びを生み出す源泉であるともいえる。相手を出し抜き、自分に都合のいいルールになるように少しずつ少しずつ境界を自分の側に寄せていくのである。それでも飽き足らず新しいルールを発明し、そしてそのルールは破られる。たとえば幼いころに鬼ごっこをしたものだが、いつまでも鬼にタッチするという原初的な決まりのみに基づき遊ぶものではなかった。さまざまなローカルルールや派生したルールが存在したものだ。そのように、既存のルールの中に長くとどまることを否定することこそが遊びの欲求の根源であるとすらいえるのかもしれない。

 それに対し、今回このパフォーマンスではルールを破る者はいない。ジャンプを省略する者はいない。後ろ向きに歩かなければならない条件が起こったときには走ることもせずその規定を守る。どれだけ時間が経とうとも、続ける限り同じ内容の動作を繰り返すことになりそうだ。スポーツというフレームを予め与えられることにより、荒々しく、危険な振る舞いでさえも、形式の中に閉じ込められ、何とも安全なことのように感じられる。「ルール破り」という脅威が存在しないために。ルール破りの可能性のない「スポーツ」は確かに新しいスポーツだ。そこでは身体の激しいぶつかりあいも、条件下の反応でしかないのだ。あまりに安全で、そのために退屈なように思われるが、それは自らが目の前で繰り広げられるものを「スポーツ」の文脈で評価していることに気付く。ジャンルの境界で、視線が揺れているように感じられる。
(2014年10月15日観劇)

【上演記録】
contact Gonzo「xapaxnannan(ザパックス・ナンナン):私たちの未来のスポーツ
西京極スタジアム(2014年10月15日)

構成 contact Gonzo
出演 contact Gonzo(塚原悠也、三ヶ尻敬悟、松見拓也、小林正和)、にせんねんもんだい、阿児つばさ、角侑里子、高田光、塚原真也、津田和俊、平尾真希、三重野龍
音響 西川文章

製作 contact Gonzo
共同製作 KYOTO EXPERIMENT
助成 公益財団法人セゾン文化財団
主催 KYOTO EXPERIMENT

チケット料金
一般 前売 ¥2,500/当日 ¥3,000
ユース・学生 前売 ¥2,000/当日 ¥2,500
シニア 前売 ¥2,000/当日 ¥2,500
高校生以下 前売 ¥1,000/当日 ¥1,000
ペア ¥4,000(前売のみ)
※ユースは25歳以下、シニアは65歳以上

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