連載企画「外国人が見る小劇場」 第1回

動き始めたプロジェクト

-これからは…。

 いつかはカンパニーを作りたいと思って準備をしてきました。仲間を作り、作品を分析し、世界観の共有を図る。博士論文を書いて大学を卒業したら具体的に動こうと思っていたのに、前倒しになってすでに動いている。
 まず「世amI」。これは自分の考えている東洋演劇の美学がどういうものか、本当にあるかどうか、あるのならそれは何か、具体化するには何をどうすればいいのか、それを徹底的に追求したい。そのためには、そこに合わせた演技のできる俳優を育てなければいけない。それを実践しているのが「Sail’s Academy」です。これは、韓国でも僕がやっていた演劇塾の名前です。
 その前から関わっていたのが「映画24区」です(注5)。映画会社が運営する映画俳優になりたい人のための学校で、ぼくはそこで演技訓練を指導しています。
 リアリズム的に「楽な」演技をするにしても、「楽な」演技というものはない。演技は、作るものだから。作るということは、意識が左右することだし、同時に表現のテクニックも必要です。そういう基本をここで教えています。
 面白いのは、みんな映画俳優になりたくて入ってくるのに、演劇を見たり学んだりしているうちに、演劇に吸い込まれていく人がいます(笑)。僕の授業を1年も受けると、もう映画だけでなく舞台もやりたくなる。そういう人はSail’s Academyに移ります。感情に任せて体を無作為に動かすのではなく、演技というのは心と体が有機的に関係しながら表現されるものであることを教えていきたいです。
 そのほかに、「SEAMI project」の活動をしています。この団体は、いま、福岡と釜山の演劇の交流を進めています。
 ぼくは釜山で演劇を始めましが、演劇仲間はみんな結局ソウルに行ってしまうことを残念に思っていました。今は韓国高速鉄道(KTX)でソウルもすぐに行けますけど、前は釜山-ソウル間は5時間以上かかったんです。なのに船に乗れば釜山から福岡まで3時間で行ける。ちょっと待てよ、福岡の方がもっと近い!ってことに気がついたんです。だから釜山で頑張って活動して、海外である福岡で演劇をやれるようになったら、ソウルに行かずに釜山で芝居をやるのではないかと思っていました。地域性の克服ですね。
 それで日本に来ることになって、福岡に仲間を作ろうと思ったんです。でも東京と福岡がこんなに離れているとは思わなかった(笑)。釜山の人を東京に呼んでくるけれど、東京では福岡の人と会う機会がほとんどない(笑)。やっと2年くらい前から福岡で芝居をやっている方々とつながりができて、新年から具体化することになりました。
 計画が二つあります。ひとつは戯曲交換公演です。釜山には戯曲賞があり、福岡には九州戯曲賞がある。九州戯曲賞の受賞作品を翻訳して釜山で上演し、釜山戯曲賞受賞作品を翻訳して福岡で上演する。連続上演しましょう、釜山で上演して、福岡でもやる。九州で上演して釜山でもやる。基本的な枠組みを作って7月に始め、2、3年重ねたいと思います。
 その次は共同制作公演です。釜山と福岡は地理的に近いだけあって、歴史的にいろんな面白いソースつまり文化資源がいっぱいあるんですよ。そこを語り出すと長くなるのでやめますけど(笑)、そういう歴史的事実を基盤に物語を作りましょう、「われわれ」の話を、両方の俳優を混ぜて「われわれ」が表現する。完成度を高めてソウルでも東京でも上演する。そういうものを作りましょう、という計画です。
 物語は歴史が基盤だから、考古学者や歴史学者を招いて、セミナーや勉強会をやりながら文化資源を集め、専門家の意見を結集し、関心を持っている協力者の輪を広げて、2、3年後には共同制作にこぎつける。それを進めているのがSEAMI projectなんです。
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-最近、韓国新人劇作家の作品が次々に上演されています。先日タイニイアリスで上演した韓国新人劇作家シリーズにも金さんが演出で参加していましたね。

 そうです。コーディネーターも兼ねていました。僕が全部作品を選んで翻訳しました。もう11月はすごかったんです。この1ヵ月だけで韓国の新人劇作家の短編6本が紹介されました。BeSeTo演劇祭で3本、タイニイアリスで3本(注6)。今回はBeSeTo演劇祭があったのでちょっと作品数が多くなりましたが、この先も第3弾、第4弾と続けていこうと思っています。韓国の演劇(もっと詳しくはイ・ユンテクさん)と縁を持っている演劇人が集まって活動を行っているモズ企画の皆さんと一緒に進めています。

-韓国に始まって日本へ、これから日本と韓国の交流を実現したい話につながって、インタビューも起承転結で終わりを迎えました。ありがとうございました。
(2013年12月9日、池袋・禁煙カフェMODeL Tで)
(インタビュー・構成:北嶋孝 撮影・編集協力:都留由子)

(注1)アリスインタビュー 釜山演劇製作所・榴華殿合同公演「Myth Busan-Tokyo MIX」(2006年10月、タイニイアリス)

(注2)日韓合同公演Tiny Alice+Little Asia in Busan合同公演〈東京+釜山〉「家族の神話 モデルホーム殺 人事件」((2002年8月、鳳いく太作、丹羽文夫・李東宰演出。アリスフェスティバル2002参加作品)

(注3)「世 amI
「世 amI」という名のモチーフは「世阿弥」から得ている。(中略)「世 amI」は「世」と「Ami」の結合語である。「世」は世界を表す。そして漢字語である。「Ami」はフランス語で友の意味を持つ。「世」と「Ami」を合わせることで、東洋の世界観を広く世界に伝えて交流を築きたいという志を表す。

(注4)世田谷パブリックシアター「三文オペラ」(2007年10月、白井晃演出、大谷亮介 銀粉蝶ら出演)

(注5)「映画24区

(注6)
韓国現代戯曲連続上演(第20回BeSeTo演劇祭 BeSeTo+参加作品)
『秋雨』ジョン・ソジョン作/金世一翻訳/演出:金世一(世amI)
『上船』ユン・ジヨン作/中塚絵美子 金世一翻訳/演出:山田裕幸(ユニークポイント)
『真夜中のテント劇場』オ・セヒョク作/中塚絵美子 金世一翻訳/演出:小池竹見(双数姉妹)
こまばアゴラ劇場(2013年11月6日(水)~11月10日(日))
韓国新人劇作家シリーズ第二弾
タイニイアリス(2013年11月27日-12月1日)
『変身』イ・シウォン作/李知映翻訳/荒川貴代演出
『罠』ホ・ジンウォン作/金世一翻訳/鈴木アツト演出
『ピクニック』キム・ヒョンジョン作/金世一翻訳・演出


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