◎劇評を書くセミナー東京芸術劇場コース第5回 報告と課題劇評
劇評を書くセミナー東京芸術劇場コースの第5回が2013年1月11日(金) 午後7時から同劇場のミーティングルームで開かれました。「ポリグラフ~嘘発見器~」公演を取り上げた課題作9本を、講師の徳永京子さん(演劇ジャーナリスト)とともに読みました。
徳永さんが担当した前回(第3回)は、提出された原稿にずばりと切り込む鋭さに身の引き締まる思いをした方がいたかもしれませんね。今回は力作揃いの原稿に「抜群の成長」「赤丸急上昇」などお褒めの言葉をいただくケースが少なからず。後日いただいた徳永さんのコメントとともに、各筆者の了解を得たそれらの原稿を掲載します。(ワンダーランド編集部)
講師:徳永京子さん(演劇ジャーナリスト)
課題:「ポリグラフ~嘘発見器~」(脚本・構想:マリー・ブラッサール/ロベール・ルパージュ、演出:吹越満)(2012年12月12日-28日)
合評:2013年1月11日(金) 19:00-21:30
会場:東京芸術劇場ミーティングルーム7(同劇場6階)
【課題劇評】
1.二元論の狭間で(佐藤 恵)>>
2.<ある真実>か<そうではない真実>か、それが問題だ -『ハムレット』の翻案劇『ポリグラフ』(高橋英之)>>
3.わたしは美しい人が好き(都留由子)>>
4.ポリグラフを目撃して(別府桃子)>>
5.演劇の中の映像表現について(今野洋子)
6.私は忘れない~お前のことは、よく覚えている(Je me souviens.~I knew him.)(小泉うめ)>>
7.ソノホント、ホント?(中村直樹)>>
8.私たちは、コトバとカラダを切り離せない。(澤田悦子)
9.嘘を発見できない「嘘発見器」(でんない いっこう)>>
*掲載は到着順。一連番号を付けた。
*筆者名はタイトルのあとの丸括弧内に入れた。
最初、届いている原稿が少ないと事務局から聞いていましたが、セミナー当日に提出されたものも含め、最終的には9本が集まりました。ストーリーが断片的で簡単に説明できない、言語系より視覚系感覚に強く訴える、『ポリグラフ』という難物が対象であったにもかかわらずです。しかも数だけでなく、内容的に充実したものが多く、2ヵ月前に講師を担当した「劇団、本谷有希子」の『遭難、』の時と比べ、数段飛ばしの成長を感じました。
良い劇評とは、その人にしか書けない、文章の中に書き手のサインが組み込まれているものです。この劇評を書いた人が、どういう嗜好、思考、志向、立場でふだんから舞台を観、『ポリグラフ』について考えたのか。それらが明確な作品がとても多かった。
具体的には、得意の数学から、嘘発見器という意味以外のポリグラフの意味を分析したり、子供の頃の教室での視線と劇場での視線を重ね合わせたり、祖父の口癖をフックに作品を引き寄せたりと、自身を表明して読者を誘い込むという柔らかなテクニックを上手く使った劇評にいくつも出合えました。劇評を書く行為を、まず自分のアゴと歯でしっかり咀嚼しているのが、とても頼もしかったです。
また、「他の人が『ポリグラフ』をどう感じたのか知りたかった」という、聴講だけの参加者が何人もいて、その方達がセミナー後に「刺激を受けた、自分も書きたくなった」と言ってくれたのもうれしいことでした。「書く」だけでなく「読んで追体験をする、自分の感想を深化させる」という目的でも、劇評セミナーをどんどん利用してもらえたらと思います。
【上演記録】
東京芸術劇場「ポリグラフ~嘘発見器~」(東京芸術劇場リニューアル記念 3×3-①)
会場:東京芸術劇場シアターイースト
日程:2012年12月12日 (水) ~2012年12月28日 (金)
上演時間:1時間30分
脚本・構想:マリー・ブラッサール/ロベール・ルパージュ
演出:吹越満
訳:松岡和子
出演:森山開次、太田緑ロランス、吹越満
主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京都/東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)
助成:財団法人地域創造
後援:カナダ大使館、ケベック州政府在日事務所
*本公演は東京文化発信プロジェクト事業です
▽『ポリグラフ』ツアー
● 松本公演 まつもと市民芸術館(2013年1月13日-14日)
● 宮城公演 えずこホール(2013年1月20日)
● 大阪公演 シアター ドラマシティ(2013年1月26日-27日)