◎劇評を書くセミナー 東京芸術劇場コースⅡ 第5回 報告と課題劇評
今回取り上げた公演はキリンバズウカ「マチワビ」です。北関東と思しき地方都市を舞台に、ある3姉妹とその周辺の人々を描くハート・ウォーミング・コメディ、といった趣ながら、3姉妹が超能力を持っているという設定とそれによるやや強引とも思える結末が、少なからぬ波紋を観客の心に広げました。
今回のセミナー講師は歌人・演劇評論家の林あまりさん。参加者の自己紹介に続き、劇評1本ずつについて参加者が挙手をして意見を述べ、最後に林さんがコメントするという形で進みました。林さんは「前置きをしないで1行目で一番言いたいことを書く」「具体的な場面やセリフに触れる」といった一般的な劇評の書き方に加え、個々の劇評についても書き出しや展開も含めて具体的にアドバイス。大変勉強になる内容でした。
参加者の間では「超能力は必要だったのか」「三姉妹ものとしてどうだったか」「地方都市という舞台設定の意味合いは」といった点を巡り活発な議論が交わされました。中でも議論の焦点にあったのは、「美人で超能力もある次女に共感できない」という言葉だったように思います。一部参加者から熱心な同意もあった一方、反論も聞かれました。観客が男性か女性かによっても見方が大きく分かれる作品であり、この点が「エンターテインメントとして許容範囲かどうか」という作品の評価を左右するポイントともつながっていたようです。
当日提出された劇評は9本。そのうち執筆者の了承が得られたものを掲載します。なお、一部原稿については、セミナーでの講評や議論を踏まえ、執筆者自身による改稿が行われています。(編集部)
講師:林あまりさん(歌人、演劇評論家)
対象演目:キリンバズウカ「マチワビ」
日時:2013年10月19日(土) 18:30-21:00
会場:東京芸術劇場ミーティングルーム7(6階)
【課題原稿】
1.「水戸黄門」の魅力と限界(米川青馬)>>
2.街も待ちもマチのうち(丸山浩木)>>
3.「おんなじ」になりたかった少女へ(仲野マリ)>>
4.「持っている」人の選択(水牛健太郎)>>
5.夕暮れに佇む、我がマチ(澤田悦子)>>
6.登米流マチと時間の描き方(齋藤理一郎)>>
7.三姉妹ものにしてSFファンタジー(小泉うめ)>>
8.身近だけど遠い存在たち(中村直樹)
9.それでもマチはワビしい(外行幸)>>
*到着順に一連番号をつけた。
*タイトルは原文のまま。筆者名は丸括弧内に入れた。
*セミナー当日合評された劇評を再度チェックしてもらった上、了解を得たものを掲載。
*観劇日時は末尾の括弧内に入れた。
【上演記録】
キリンバズウカ「マチワビ」
東京芸術劇場シアターイースト(2013年9月19日-25日)
脚本・演出 登米裕一
出演
日栄洋祐、こいけけいこ、加藤理恵、上鶴徹、黒岩三佳、後藤剛範(国分寺大人倶楽部)、永島敬三(柿食う客)、松永渚、森下亮(クロムモリブデン)、内田悠一(レボリューションズ)、折原アキラ(青年団)、金聖香、助川紗和子、渡邊亮
スタッフ
舞台監督:土居歩
舞台美術:青木拓也
照明:吉村愛子
音響:星野大輔(サウンドウィーズ)
音楽製作:碇英記
演出助手:山口千晴(江古田のガールズ)
衣装:富永瑞木
宣伝美術:山下浩介
宣伝撮影:引地信彦
宣伝メイク:田中順子
企画協力:仲村和生(ネビュラプロジェクト)
制作:安井和恵(クロムモリブデン)
協力:アワーソングスクリエイティブ、太田プロダクション、キューブ、ゴーチ・ブラザーズ、スーパーエキセントリックシアター、タイムリーオフィス、リコモーション、六尺堂、ワタナベエンターテインメント
提携:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
企画・製作:キリンバズウカ
チケット料金
一般:前売3,500円/当日3,800円 高校生割引:前売1,000円