柿喰う客「無差別」

◎差別の”ショーケース”
  林あまり

 そのあとに「殺人」「テロ」など物騒な言葉ばかりが思い浮かぶ。劇団「柿喰う客」の今回の公演タイトルは「無差別」である。

 中心となるのは「犬つぶし」の家に生まれた狗吉(イヌキチ)と、その妹・狗子(イヌコ)。村人から馬鹿にされ、人間扱いされずに育った狗吉は、妹だけは「ケガレ」なく美しくあってほしいと、家業を一切手伝わせない。仏像を掘りつづけよと命じ、自分はひとり、犬を殺して生計をたてる。

 一方、村の山では「盲のモグラ」が、山の神へのいけにえにされそうなところを、知恵を使って生き延びる。ついには自ら山の神に取って代わるというドラマが起こっていた。
 ここまで観ただけでも、部落差別や、「盲」「かたわ」といった差別用語と向き合う視点を持つ芝居だということがわかる。
 さらに後半になると、原爆や放射能の問題もあぶり出されてくる。

 志は高いのだろう。だが言葉は悪いが、差別を巡るあれこれを、全部まとめてブチ込んだ感じが否めない。すべてをひとつにし、原点に戻って考えてみたかったのかもしれないが、物足りなさを招く結果となった。

 差別される側が実にエネルギッシュに描かれるけれど、現実はもちろんそうではない。現実がそうではないからこそ夢を見ようよ、ということなのかもしれないが、私はそこにどうしても乗れない。セットのシンプルさや動物が出てくるからというだけではない理由で、最後まで、高校演劇を観ている感覚が拭えなかった。

 とはいえ役者はそれぞれ魅力があり、特に「盲のモグラ」(女性!)をセクシーにのびやかに演じた深谷由梨香が光る。

 今回私には、差別の”ショーケース“としか映らなかったけれど、ここからもっと深いところを目指して次回の公演に期待したい。
(了)

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